水谷もりひとブログ

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【朝礼】無様でいいんだ

今、みやざき中央新聞では俳優の滝田栄さんの講演記事を連載しています。
NHKの大河ドラマで徳川家康を演じるにあたり、苦労した話がメインです。

300年の安泰した徳川幕府の基礎を築いた家康は、小学校の社会科にも登場するので、子供でも知らない人はいません。
ところが、改めて徳川家康という人はどういう人物だったのかと問われると、分からないのです。

滝田さんが家康を演じるという局面を迎えたとき、初めてその人物像を掴む難しさを感じたわけです。

なぜ織田信長や豊臣秀吉、今川義元、武田信玄などの武将はわかりやすいかというと、我々と同じような人間だからです。

確かに人間の器のが大小の違いはありますが、権力欲、出世欲、金銭欲、そして色欲など、こういう欲望が歴史上の偉人も、我々も、その生き方を突き動かしているので。
それは多かれ少なかれ、今の政治家にも通じるところがあると思います。

市議会議員から国会議員までやりたい人はたくさんいるのに、自治会長とかPTA会長になりたいという人は皆無です。
自治会長とかPTA会長というのは、それらの欲の実現に無力だからです。

さて、信長や秀吉には武勇伝がたくさんあります。だからビジネスマン向けの経済誌にもどうやって天下を取ったかとか、出世したかという逸話がたくさんあります。

ところが、家康の場合、そういうのがあまりありません。だから滝田さんはいろいろ本を読んで役作りをしようとするんですけど、分からないんです。
逆に、情けない、無様なエピソードはいろいろあるようです。

武田信玄との闘いでこてんぱんにやられて、うんちをおもらしするほどの恐怖を感じて逃げまくったとか、奥さんを部下に寝取られてしまったとか、息子の信康もかなりの不良だったという資料も残っています。

滝田さんは、人生というのはかっこつけなくてもいいんだ。無様でいいんだということに気づきました。

そして、その後の人生のさまざまな不幸、挫折に対して、しっかり一つ一つ忍耐しながら乗り越えていった家康に、他の武将とは違う、人生のエネルギーを見つけました。
それが、幼少期に鍛えられた精神的な学びでした。
19歳まで家康は特の高い僧侶から精神的な修行を受けていました。
ここで培ったものは、他の武将が持っている人生のエネルギーであるこの世の欲というものとは次元の異なる高い精神性だったのです。

そんな政治家、そんなリーダーが求められますし、我々のような平民でも、かっこつけなくてもいい、無様でもいい。ただ高い精神性だけはしっかり持っている必要があると思います。