水谷もりひとブログ

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空所を持とう!

「空所」という日本語は今や死語になってしまった感があります。
読んで字の如く、「何もないところ」です。

人間の生活には「空所」が必要だというのです。
それは趣味のようなものです。
例えば、3DKの家に住んでいるとします。
どの部屋にも家具がいっぱいで寝るのがやっと。
もう物が入りません。
こういう家に長年住んでいると、仕事で疲れて帰ってきてもその疲れが取れません。
家には、それなりの余裕というか、「空所」が必要なのです。

人生にも「空所」、すなわち趣味を楽しむ時間が必要です。
本業とは全く関係ないことに熱中することが大事です。
趣味を持っていると本業のことがよく分かるそうです。

剣豪・宮本武蔵が吉岡一門との対決の前夜、なんと遊郭にいました。
あの絶世の美女・吉野太夫と一夜を過ごしていたのです。
しかし、翌日の決闘のことで宮本武蔵はかなり緊張していました。
それを吉野太夫は感じ取ったのでしょう。
どこで感じ取ったのかは吉川英治作の『宮本武蔵』には書かれていません。
もしかしたら、宮本武蔵の下半身を見て、「あら、今日は縮こまっているでありんす」と思ったのではないかと私はにらんでいます。

吉野太夫は近くにあった琵琶をナタで叩き壊してこう言ったとか。
「琵琶の美しい音色は、中が空いているからこそ出るものでありんす」
「空所」の大切さを、重要さを説いたのです。

それから宮本武蔵は心身の緊張が溶けて、吉野太夫と熱い夜を過ごし、翌日の決闘にも勝利したそうです。

人生に趣味(空所)は必要です。
心を遊ばせ、損得勘定を離れて無心になれる時間です。
そのことで自分を見つめなおすことができます。
大きな仕事をする人ほど、忙しい人ほど、遊び上手なのはこのためです。

そして究極の「空所」とは、仕事を趣味にしている人です。
こうなると仕事がおもしろくて仕方がなくなり、
損得勘定も考えず、没頭してしまいます。
「忙しい」という観念はなく、無心になれます。

こういう人の仕事は思いもよらぬ成果が生まれます。

僕もやらなければならないことがたくさんあって焦ることがあります。
社説の準備をしなければならない。
部下がまとめた原稿をチェックしなければならない。
次の講演のレジュメを作らなければならない。
南阿蘇村支援のポストカードをつくらなければならない。
新刊本のPRの準備をしなければならない。
来週号の新聞を制作しなければならない。
そして、それらと同じくらい大事なことは「遊ばなければならない」
先週は映画でした。『殿、利息でござる』を見ました。
レイトショーだったので、前半は眠くて朦朧としていましたが、
後半はめっちゃ感動しました。



(参考文献:『丸山敏雄伝』)