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取材ノート 2662号(2016/09/05)
マニラの太陽が見たくて

中部特派員 山本孝弘
 「外国人技能実習制度」というものがあります。開発途上国の発展を担う若者を一定期間日本に受け入れ、産業技術を学んでもらうというものです。同時に労働力不足に悩む日本に優秀な人材をもたらす、両国にとって有益な制度です。

 8月に派遣国の一つであるフィリピンに行き、現地の学校の授業風景や面接の様子などを視察しました。20代後半の生徒が多く、妻や子を養う立場にある人も少なくありませんでした。

 「日本に行って高度な技術を学びたい」と願う彼らの熱意と、そのハングリー精神に圧倒されました。

◎          ◎


 フィリピンの首都マニラの副市長にも会えました。副市長を務めながら俳優業もこなす、フィリピンのスターです。

 しかし、溢れ出る街の活気を作っているのは彼でも市長でもなく、汗にまみれて働く一般市民です。

 私は若い頃にアジアのいろいろな街を放浪した経験がありますが、マニラは初めての訪問でした。マニラにも東南アジア独特の熱気がみなぎっていました。

 その無秩序な喧騒に浸っていると、昔、タイ東北部やインドで出会った、路上生活をする子どもたちを思い出しました。

◎          ◎


 我々は今回の現地案内人のジャズ氏に頼み、視察の合間にスラム街に連れていってもらいました。

 「スモーキーマウンテン」と呼ばれるその地区はごみの集積場で、そこの住民はごみの中からお金になるものを探し、わずかな日銭を得ることで生活しています。

 ジャズ氏にお願いして、我々は少しの間だけ車から降りました。そこでジョーイという13歳の少年に会い、話をすることができました。

 「もっと稼げる仕事を得ることよりも、今は学校に行きたい」

 そう語る彼の目が印象的でした。ドラッグに走る子どもも多い地区ですが、「そんなものに興味はないよ」と笑う彼の笑顔が救いでした。

◎          ◎


 今、フィリピンは雨季です。滞在した4日間、ついに太陽を見ることはありませんでした。激しい雨で道路の一部が冠水し、マニラの中心部に戻る我々が乗った車は途中で渋滞に巻き込まれました。

 そのとき、車の窓がノックされました。私の5歳の娘と大して変わらない歳の少女が2人、「花飾りを買って」と話しかけてきました。彼女たちもまたストリートチルドレンでした。

 花を受け取り、相場より高いお金を渡すと、2人は愛らしい笑顔を浮かべ、手を繋いで小走りに去っていきました。

 「いつか彼女たちが心から幸せな笑顔になる日が来ますように…」

 マニラの街を覆い尽くす分厚い雨雲を見上げながら、私はその向こうに隠れている明るい太陽を想像していました。
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