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取材ノート 2666号(2016/10/03)
お弁当には愛がある

中部特派員 山本孝弘
 香川県内の小中学校の元校長で、今は全国で講演活動をされている竹下和男さんのお話を聴く機会がありました。

 竹下さんは「弁当の日」を提唱し、全国に広める活動をしています。

 「弁当の日」とは、食の大切さに気付いてもらおうとする食育活動の一環で、献立、買い出し、調理、弁当箱詰め、そのすべてを子どもたちが行う日です。

 この「弁当の日」の実践校は、今では全国で約1800校に上るそうです。

 竹下さんの話を聴きながら、お弁当の思い出が三つ頭に浮かんできました。

◎          ◎


 (その1)

 高校時代、同じ部活動をしているWという友人がいました。彼は昼休みの時間に菓子パンを食べていることが多かった気がします。昼に姿が見えなくなることもありました。

 ある日の昼休み、私が何かの用事で部室に行くと鍵が開いていました。中を覗くと、Wがひざを折り曲げてぼーっと座っていました。

 Wの家は貧しく、お弁当を作ってくれる母親もいませんでした。私は毎日お弁当を食べられることを当たり前だと思っていた自分の傲慢さに気付きました。

 (その2)

 建設現場の車からお弁当が盗まれることがあります。当時50代後半だったMさんがその被害に遭いました。

 Mさんには悪いですが、財布を盗まれるのと違って、お弁当を盗まれるというのはちょっと滑稽な感じがします。Mさんもみんなと一緒に笑っていましたが、少し落ち込んでいるようにも見えました。

 その日の夜。

 「弁当箱だけでも返ってこないかな。実はこの会社に再就職が決まった時、娘が買ってくれたものだったんですよ」

 みんな帰った静かな事務所で、Mさんはそう言って悲しそうに微笑みました。

 (その3)

 私の妹の結婚式で読み上げられた、両親への感謝の手紙の一部です。

 「恥ずかしい話ですが、私は会社に持って行くお弁当をお母さんに作ってもらっていました。『マンネリでごめんね』といつもお母さんは言っていたけど、お母さんのお弁当の味は一生忘れません」

 妹の涙声に私も思わず涙が出そうでした。母を見ると、意外にも母は毅然と立ち、じっと妹を見つめていました。その姿がなんだかかっこよく見えました。

 一方、母の隣にいた父は立っているのもやっとなくらい号泣していて、とても恥ずかしかったです。

◎          ◎


 「弁当」は、今では"bento"と英語にもなっています。

 "Lunchbox"(ランチボックス)と"bento"は違うと知り合いのアメリカ人が言っていました。お弁当には愛が詰まっているからだそうです。
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