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取材ノート 2680号(2017/01/30)
欲しかったのはドリルなのか

編集部 増田翔子
 こんなお話をご存知でしょうか。

 あるホームセンターにお客さんがやって来てこう言いました。「すみません、ドリルはありますか?」

 店員さんが「今、売り切れているんです」と答えると、お客さんはキリを買って帰っていきました。

 このお客さんはドリルが欲しかったのでしょうか? 欲しかったのは「ドリル」ではなく「穴を空ける道具」だったのです。

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 昨年11月、コミュニケーション・プランナーである越智一仁(おち・かずよし)さんのお話を聞いた時にこんな問題が紹介されました。

 「カレーを食べたお客様に『おいしい』と言わせたい。時間やお金の制限は一切ありません。さてどうしますか?」

 まず考えられるのは「最高の食材を用意して最高のシェフにカレーを作ってもらう」ことでしょうか。これならきっと「おいしい」と言ってくれるはずです。

 越智さんは「僕ならあらゆる手段を使って、このお客様を1年間カレーから遠ざけます」と言われました。確かに1年越しに食べるカレーだったら、レトルトであっても「おいしい」と言ってしまいそうです。

 さらに越智さんは言います。「このお客様のお母さんにカレーを作ってもらってもいいですね」と。「おふくろの味」を提供することで「おいしい」と言わせるというのです。

 つまり相手に「おいしい」と言わせるために、決して「おいしい」カレーをつくる必要はないということです。「おいしい」の価値は人それぞれであり、状況によっても違ってきますから。

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 さて、もうすぐバレンタインデーがやってきます。多くの高級チョコレートと一緒に並ぶのは、1個32円のチョコ菓子「ブラックサンダー」です。そこにはこんな一言が。

 「一目で義理とわかるチョコ」

 バレンタインデーは何も好きな人に思いを伝えるだけの日ではありません。世間には「チョコをあげなければならない。でも勘違いしてほしくない」と悩む方もいるのです。

 そんなときにブラックサンダーをあげれば、まさに「一目で」本命ではないと分かってもらえます。

 普段は「安くておいしい」という理由で売れているブラックサンダーですが、バレンタインデーには別の魅力を発揮していたんですね。

 当たり前のことですが、相手がどんなものを求めているかは相手の立場に立って考えてみないと分かりません。

 それはドリルでないといけないのか、お客様はどんなカレーを「おいしい」と感じるのか、32円のチョコ菓子は「安くておいしい」だけなのか。

 相手にとっての「最適」のために、相手の立場に立って考えることを意識しようと思います。
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