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取材ノート 2688号(2017/03/27)
心の命を永遠に

編集部 増田翔子
 先日、新潟県胎内市にお住まいの寺門登志(てらかど・とし)さんから1冊の文集が送られてきました。胎内市中央公民館が年に1回発行している文集で、今年で41年目になるそうです。

 寺門さんはこの号に「書き残すということ」という文章を寄稿されていました。簡単に紹介します。

~ ~ ~ ~


 何か書きましょう、と誘うと必ず「恥ずかしい」「下手だから」と言われる。誰も作家のような文章など望んでいないのに。

 人は初めから大人ではなかったし、後期高齢者でもなかった。ただ、後期高齢者でなければ書けない思い出がたくさんある。

 私たちの青春時代の8割は戦争であけくれた。よく「戦争の話はしたくない」とか「思い出したくもない」と言う人がいるが、その思い出は私たち老人だけにある思い出なのだ。

 この思い出こそ、私たちが書き残さなければならないことだと思う。

◎          ◎


 文章を読み、小学6年生の時のことを思い出しました。担任の先生が1年間かけて、「語り継ぐ」という話をしてくれたのです。

 何を「語り継ぐ」のかというと、私たちが生まれる前に起きた戦争のことです。

 ある日、先生はこう言いました。

 「皆のおじいちゃん、おばあちゃんは戦争を体験していると思います。今日の宿題は、おじいちゃんおばあちゃんから戦争について聞いてくることです」

 そうして祖父から当時の様子を教えてもらい、どれだけ大変な毎日だったのかを知ることができました。

 ある時はクラス全員でバスに乗って出かけたことがありました。その場所には「人間魚雷回天訓練の地碑」と書かれた碑が立っていました。

 「戦争で若い命がたくさん散っていったことを決して忘れてはいけない」と、先生は涙ながらに話してくれました。

◎          ◎


 今週号で佐藤敏郎さんのお話が最終回となりました。東日本大震災の時、娘さんを津波で亡くされた佐藤さんはこのように語っています。

 「あの日のことは思い出したくもないし、話をしたくもない。でもだからといって口や耳を塞いでいたら、きっと忘れられてしまう」と。

 「あの日」を風化させないためには、「語り継ぐ」ことが不可欠だと思います。

 寺門さんは「書き残すこと」の最後にこんな一文を書かれていました。

 「生身の生命は短いけれども、心の命を永遠に残していこうではないか」

 震災や戦争のこと、忘れてはいけない思いを、私たちが語り継ぎ、後世に残していくことが大事なのだとあらためて感じました。
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