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転載・過去・未来 2667号(2016/10/10)
その2 治すのは患者の心 ~90になってもやることがある人生を~

堀川病院院長(当時) 早川一光
 年というのは、みんな取らなければならないものです。

 だから、「年を取ったから杖をつかないと歩けなくなった」と考えるのではなく、「杖をついて歩いたほうが安全な身体になった」と考えてくださいね。

 それから、「私はおむつをしている。情けない」とお考えにならないで、「おむつをするほど長生きした」と考えてほしいんです。

 若い人もそうです。「ついにうちのばあさんもおむつをするようになったか。年は取りたくないなぁ」と考えるんじゃなくて、「うちのばあさんはおむつをするほど長生きしてくれた」と思いましょう。

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 人は、「年を取ってから老いる」のではなく、「生まれた瞬間から老いる」という宿命を背負って生きています。

 生まれたときから「老い」は皆さんの後ろからついてきます。あるときは忍び足で、あるときは早足で。

 「若い、若い」と思っているうちに「老い」はすぐ後ろまで迫ってきていることがあります。そして、ある日突然、後ろから肩を軽くトントンと叩いてこう言うんです。「おい!」と(笑)。

 突然、「老い」から肩を叩かれた人はショックを受けます。これを「老いるショック」といいます(笑)。

 だから、時々後ろを振り向きながら、「老い」に向かって、「はよ来い、何をぐずぐずしている」と言えるくらい、年を取ることを積極的に受け入れてください。

 「80歳になったらこうしたい」「90歳になってもやることがある」と、いつも将来に夢を抱いて生きていると、「老い」が追いつけなくなる。後ろのほうから「老い」が「おいおい、待ってくれ!」と言って必死で追いかけてくるようになる。そういう人はいつまでも若々しい人です。

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 年寄りに言っておきますが、介護が必要になったとき、息子夫婦から「私たちが看ます」と言ってもらえるような年寄りにならないといけません。

 嫁に向かって「あんたの世話にはならん」と言ったおばばがいましたが、これはおばばが間違っています。

 年を取ったら素直が一番です。「すまんね」「ありがとう」が素直に言える年寄りになってくださいね。

 嫁が先に変わるんじゃない。年寄りが先に変わるんです。それだけ年を重ね、経験を積んできたんだから、人間はできているはずです。

 何のためのシワか。いろんな苦労を乗り越えてきたシワでしょ。

 年を取って家事ができなくなっても、「すまんね」「ありがとう」と言える年寄りになれば、家の中が変わります。

 「おばあちゃん、いつも元気ですね」と言われて、「元気で悪いか」とそんなこと言っちゃだめですよ。「はい、おかげさまで」と言ってくださいね。

 私は病院でたくさんの年寄りを診てきましたけど、病気を治すことなんてできないと思っています。治ったと思ったら、別の病気で亡くなっていますからね。どうせ死ぬのなら治さなければよかったと思うようなこともありました。

 医者はインフルエンザを治しながら、点滴をしながら、何を治さなければならないかというと、患者の心です。風邪は放っておいても治るけど、歪んだ心は放っておいても治りません。

 私は患者に「おかげさまを口癖にしなさいね」「すまんね、ありがとうっていつも言うんですよ」と言っているんですね。

 家族や周囲の人から惜しまれるように年を重ねていかないといけないと思いますよ。 

(1999年3月8日号より)


★このコーナーは過去25年のバックナンバーの中から選りすぐりの記事に加筆し、読み切りで転載しています。
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