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家庭教育改革はOMO作戦

2006年11月13日

 いじめや自殺など暗い話題が尽きない。いじめや嫌がらせ、差別や虐待はなぜ起きるのか。その心はどこから来るのだろう。

 いろんな人の話を聞いてきて、それらを集約し、何とか辿り着いた自分なりの答えは「愛の不足感から生まれた自己嫌悪感」。ここに起因するのではないか、そんな気がしている。

 人は皆、誰かに100%依存しなければ生きていけない存在として生まれてくる。食べることも排泄の処理も、寝返りを打つことさえも、一人で出来ない。だから、どんな命でも100%の愛情を必要としているのだ。そんな小さな命に100%の愛情を注ぐことができたら、その子はきっと幸せに成長していけるに違いない。

 だが、親は神様じゃない。「親」として未熟であり、欠点だらけ。100%の愛情どころか、自分の欠点を子どもに与えながら育てていることもある。

 それでも、豊かな愛情をたっぷり受けられた子は、自己嫌悪感も小さい。もらった愛情の分だけ自己肯定感を持ち、他人にも優しくなれる。自己表現として自分の個性や能力を伸ばすための努力も惜しまない。

 一方、もらった愛情が極端に少ない子の場合、引け目や妬み、不平等感、劣等感などのマイナス感情を蓄積しながら成長していくケースが少なくない。その子だって豊かな愛情を受ける器を持って生まれてきたのに、その器に充分な愛情が注がれなかったために、そこに自己嫌悪感がどんどん入り込んで蓄積されていくのだ。

 そういう子は大概自分が嫌いである。「自分はダメな人間だ」「どうせ自分なんて…」と、自分で自分をいじめていく。最初のいじめの被害者は自分だ。やがて、被害者は加害者になる。自己嫌悪感が大きければ大きいほど、自分に対する嫌悪感を隠そうとして、自分より弱い子を見つけ、攻撃を始める。

 愛が足りない。どこにいけば愛はあるのか。自分を大事にしてくれるところ、「お前は大切な人間だ」と認めてくれるところ。ある子はそれを求めてヤクザの道に迷い込み、ある子は性の売買で満たそうとする。

 この前、面白いテレビをやっていた。脳内にオキシトシンというホルモンが分泌されると、愛とか信頼というものが生まれるというのである。

 やたら吼える犬が登場。奥さんには懐いているのだが、旦那さんには懐かず、近寄ると噛み付く犬だった。その犬にオキシトシンを嗅がせた。すると数分後にはおとなしくなり、旦那さんの腕に抱かれて気持ち良さそうにしていた。

 オキシトシンは、スキンシップを通して心地良さを感じる時、脳内から分泌される「愛と信頼のホルモン」と呼ばれている。

 オキシトシンの分泌量が最も多いのは、おっぱいを飲んでいる時の赤ちゃんの脳だそうだ。赤ちゃんにとっては安心と信頼と愛情に包まれている至福の時間なのだろう。 同時に、授乳している母親の脳からもたくさんのオキシトシンが分泌されるそうだ。そうやって授乳の度にオキシトシンを脳内にたくさん分泌させた子は、思いやりのある、愛情豊かな子に育っていく。

 この時期にスキンシップが足りなかった子どもたちがいる。少年期、青年期になるにつれ、益々親子のスキンシップは無くなっていく。この時期の子どもの脳に、オキシトシンを出すことができたら、「自分は大事にされている」と思えるようになり、信頼や思いやりの心が育っていくはずだ。そんなきっかけづくりはできないだろうか。

 そうだ、オイルマッサージはどうだろう。パンツ一枚になってうつぶせになってもらう。その足の裏から背中にかけて、たっぷりとオイルをつけた手をゆっくり滑らせていく。スキンシップという点でも、心地良さという点でも、癒しという点でも、これ以上の至福の時間はない。

 いつもイラついていたり、ちょっとしたことでキレたり、自分より弱そうな子をいじめたり、「どうせ俺なんて…」と勉強する意欲もなくなっていたり、学校に行けずにずっと引きこもっていたり、そんな子どもの心の奥底にある自己嫌悪感を溶かして、「自分大好き」モードにするために、『オイルマッサージ・オキシトシン(OMO)作戦』はいいかもしれない。脳内にたくさんオキシトンが分泌されたら、きっと「自分は大事にされている」と実感出来ると思う。やり方は、まず親がお店に行ってやってもらって学んでくるといい。

 くれぐれも世のお父さんたち、風俗店とは違うのでお間違えのないように。