水谷もりひとブログ

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セミの如く

夏休みになると、NHKラジオで『こども電話相談室』が始まります。
今年の夏にこんな質問がありました。
その子は、道端で死にかけた昆虫を見つけたんです。
家に連れて帰って砂糖水を飲ませたりして
介抱してあげたら元気になったというんです。
それで思った。
「動物病院はあるのになんで昆虫病院はないんだろう」と。

その子は『こども電話相談室』に電話を掛けてきて
その質問をしていました。
そしたら昆虫の先生が答えました。
「昆虫は治してあげても元々寿命が短いのですぐ死んじゃうんです」と。

確かにイヌやネコと違って、5年も10年も生きられません。
昆虫は長生きする生き物じゃないんですね。
命のはかなさを教えてくれる生き物かもしれません。

ところでセミってどのくらい生きるか知ってますか?
セミは昆虫の中で、断トツの長寿虫です。長いセミで17年も生きます。
平均10年くらいは生きるそうです。

セミは交尾して、メスが木の枝に卵を産みます。
そして枝の上で孵(ふ)化します。

孵化したセミの幼虫は木から降りて、
地面に穴を掘って地中生活を送ります。
それが平均10年です。

あいつらは地面の中でじっとしています。
「いつか地上に出て大声で鳴くんだ」という夢を持って、
じっとしています。

早い子で3年、遅い子で17年、平均10年くらいの地中生活を経て、
やっと地上に出て、木の枝とか木の幹で羽化して、成虫になり、
約2週間くらいで死にます。長い子でも1か月の命です。

10年くらい土の中にいて、やっと出てきたかと思ったら2週間くらいで死ぬ。
その間、あいつらは何をしていると思います?

ただひたすら鳴いているのです。
ミーン、ミーンと鳴くだけです。
それはまるで「出てきたぞー」「おれはここで生きてるぞ」と
自分の存在を訴えているようです。

子どもが捕まえに来ると、
「おい、そこのガキども、捕まえらるものなら捕まえてみろ」
とか言って、からかったりします。
子どもがアミで獲ろうとすると、「アッカンベー」とか言いながら、
おしっこをひっかけて逃げます。

たまには捕まって子どもを喜ばせていますが。

ミツバチや蝶々は花から花に飛んで蜜を取り、
それで受粉させます。そのおかげで果物がなります。
またミツバチは人間に蜂蜜を供給してくれます。

カブトムシやクワガタはかっこいいです。
デパートに持っていけば高く売れます。

でもセミは人間社会に何の貢献もしません。
ただうるさく鳴いているだけです。

彼らは何の為に生きているのか。
分かりません。

ただその存在感は大きいです。
だって大声で鳴いていますから。
ミーンミーンと。

あれほど大声で鳴く昆虫がいるでしょうか。

僕は思います。
ミツバチみたいな生き方もある。
カブトムシみたいな人間もいる。

しかし僕は「蝉の如く」生きよう。

存在感をPRする。
みやざき中央新聞。