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取材ノート 2683号(2017/02/20)
祖母の礼

編集部 野中千尋
 2月6日号から、一般社団法人やまとしぐさ協会代表・辻中公(つじなか・くみ)さんのコラムがスタートしました。

 その中で、辻中さん3冊目の著書である『やまとしぐさ日めくりメッセージ』(ごま書房新社)というカレンダーが紹介されています。

 日常の美しい所作や大切にすべき和の心について書かれた中に、「礼の型を整えることは、謙虚さと敬意の心を育む日本の智恵です」という言葉がありました。

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 「礼(お辞儀)はコミュニケーションの入り口」といわれています。初めて会った人とあいさつを交わすとき、日本の文化としてまずお辞儀をします。

 「武士道のしつけ」というテーマで1月に掲載した石川真理子さんも、著書『女子の教養』の中で「お辞儀は心を込めてするものです」というお祖母さんの教えを記されています。

 石川さんの家では子どもから大人まで「礼」の作法が行き渡っていたそうで、お祖母さんは「かたちだけのお辞儀ほど薄ら寒いものはないんですよ」とも言っていたそうです。

 大正時代の作家で旧長岡藩家老の娘だった杉本鉞子(すぎもと・えつこ)さんも、著書である『A Daughter of the Samurai(武士の娘)』の中で、お辞儀に秘められた日本の精神を海外に向けて紹介しています。

 「お辞儀はただ体を曲げる動作ではありません。…母が重々しい態度で低いお辞儀をいたしましたとき、私はそこに愛情がひしひしと感じられましたし、傍にいた人も、そのかくれた思いの深さを汲むことができたと思います」

 やはりお辞儀は日本人にとって特別なものだなと実感する中で、ふと思い出したエピソードがあります。

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 私が小学生の頃、祖母と座敷のあるお店で食事をしていた時のことです。担任の先生が偶然同じ店に来ていたのを見つけた私は、先生を呼び止めて祖母に紹介しました。

 祖母も私と同じように、気軽にあいさつをするだろうと思っていたのですが、祖母は食事中にもかかわらず素早く先生の方に向き直り、「祖母でございます。いつも孫がお世話になっております」と両手をつき、深々と頭を下げたのです。

 流れるような一連の動作と初めて見る丁寧なあいさつにびっくりし、親しみやすかった丸い背中に威厳さえ感じたのをよく覚えています。

 今思えば、あのお辞儀は先生への感謝の心や私への愛情がこもった古き良き礼の作法でした。

 一つひとつの所作に心を込める大切さをあらためて感じ、誰かに・何かに対して頭を下げる自分の姿と心を今一度見直してみようと思いました。
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