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取材ノート 2656号(2016/07/18)
その価値、3兆円

編集部 増田翔子
 「約99.99999995%オフ!」

 本屋で目に飛び込んできた驚きのプライスダウンに、迷わず買ってしまった本が『文房具図鑑』(いろは出版)です。

 作者は山本健太郎くん。文房具が大好きな小学6年生です。

 この図鑑は夏休みの自由研究で学校に提出したもので、それが本となって出版されました。

 図鑑にはえんぴつや消しゴムはもちろん、ボールペンやノート、クリップなどさまざまな文房具が紹介されています。

 それぞれの文房具は健太郎くんがすべて原寸大でイラストを描き、特徴や値段だけでなく、書きやすさ、発色、インクの乾き具合といったマニアックなところまで記してあります。

 およそ100ページにも及ぶ図鑑の中には168点もの文房具が登場します。

◎          ◎


 健太郎くんいわく、「言いたいことが言えない世の中だから、文房具くらいはハッキリ言いたいと思った」とのこと。あまりのかっこよさに、とても小学生の言葉とは思えません。

 その言葉の通り、それぞれの文房具について健太郎くんの感想が率直に記してあり、中には辛口コメントも。

 「ださいボディーだと私は思ったが、ほかの人はどうやらカワイイらしい」「デザインがじみだな」「でもちょっと値段高くない!?」「1本もってるとなんかフランス人っぽくみえる(?)」など、この図鑑でしか読めないコメントが盛りだくさんです。

 蛍光ペンの紹介ページには、その紹介したペンを使って「文具最高だぜ」と書いてあります。すみずみまで健太郎くんの文房具愛を感じる図鑑です。

◎          ◎


 本の最後には文房具メーカーの方や学校の友だち、家族からのメッセージが掲載されています。

 「細かいところまで見ていてびっくり」「大人でも作れないよ」というメッセージの中に「100ページも書き続けるなんてすごい」というコメントがありました。

 この図鑑は、まさに健太郎くんの「超大作」です。1年をかけて、実際に文房具屋さんに行って、買って、触って、使って、大きさや重さを測って、そうしてできた図鑑です。

 きっとこの図鑑を書き上げようとする健太郎くんを支えてくれたのは、「文房具が好き」という気持ちだったのだと思います。健太郎くんの思いを知って、あらためて「好き」の持つ力を感じました。

 文房具の紹介をするという点では本屋に並ぶ多くの本と変わらないのですが、小学生ならではの感性や、素直さ、純粋さを感じるのは、この『文房具図鑑』だけだと思います。

 この図鑑、作者希望価格は3兆円+税。残念ながら本屋では1500円で売られていますが、3兆円分の思いが詰まった1冊です。
最新号

2723号2017年12月18日発行

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