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取材ノート 2678号(2017/01/16)
懐かしい東京のカレー屋さん

中部特派員 山本孝弘
 本紙に掲載中のコラム、原達郎さんの『カレーなる人々』を毎回楽しく読ませてもらっています。よくカレーのネタがこれほど続くものだと賛嘆の思いです。

◎          ◎


 25年くらい前、フジテレビで『カルトQ』というクイズ番組をやっていました。一つのジャンルに特化したクイズのみが出題される異質な番組でした。

 週によってジャンルは変わりますが、一般の人には全くわからないマニアックな問題です。例えば「ビートルズ」がテーマの日だと、「ジョージ・ハリソンが生まれた時の父親の職業は?」といった具合です。

 その番組のある日のテーマが「カレー」でした。回答者には予選を勝ち抜いた5人の強者が出場していました。

 当時私は東京に住んでおり、職場の近くに行列のできるカレー屋さんがありました。気になってはいましたが、行ったことはありませんでした。

 すると、番組にその店が登場したのです。その店が「カレー通の聖地」と呼ばれていることを私は初めて知りました。

 ある冬の日。私は初めて行列に並んでみました。外観はあまり目立たない佇まいで、中もシンプルな造りでした。そこで「いかにも」と思われる夫婦が「なるほど」と感じさせるカレーを作っていました。

 黙々とカレーを作るご主人はまるで修行僧のよう。髪型に特徴のある奥さんが、個性豊かなカレーを運んでくれます。野菜本来の甘みが適度な辛みを持ったルーになじみ、あえて硬めに炊いたご飯と融合することで「聖地の味」を完成させていました。その日から、私はちょくちょく行列に並ぶようになりました。

◎          ◎


 2年前に『カレーなる人々』を読んだ後、私は急にそのカレー屋さんを思い出しました。細かな記憶は薄れていますが、あのこだわりの味の記憶は薄れません。インターネットで店を検索してみました。

 「37年6ヶ月という長きにわたってご愛顧いただき、ありがとうございました」

 そんなご夫婦の感謝の言葉がホームページにあり、店は平成24年に閉められたことがわかりました。もうあの味を満喫することはできません。そう思うとますます懐かしく思えてきました。

◎          ◎


 今回この記事を書くにあたり、またインターネットで検索してみました。

 驚きました! 平成27年10月、場所をお台場に移し、そのカレー屋さん「夢民」は完全に復活していたのです。ご夫妻は店には出ていないようですが、しっかりと「味の監修」をしているそうです。

 きっと「カレーなる人々」で毎日にぎわっているんだろうなと想像していたら、なんだかカレーが食べたくなりました。
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2723号2017年12月18日発行

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