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取材ノート 2684号(2017/02/27)
悲しい時には「 しい曲」を

編集部 増田翔子
 先週号から島田妙子さんの連載が始まりました。今週号では、「怒り」などのネガティブな感情こそ肯定することが大事だというお話をされています。

 「喜び」「嬉しさ」といった感情と同じように、「怒り」「悲しさ」といった感情もきちんと認めていかなくてはいけないと考えさせられました。

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 『インテリジェンスの原点』(扶桑社)という本の中で、作家・五木寛之さんがこんなお話を紹介していました。

 戦後、ある若者がバンドを組んで老人ホームへ慰問に行きました。つらい暮らしをしているお年寄りの方々を元気づけようと、明るい曲調の音楽を演奏したそうです。

 ところが誰も乗ってこなかったのです。そのうち1人の男性が立ち上がって「俺たちは悲しいんだ。だから悲しい歌を聴きたいんだ!」と言いました。

 そこで切ない曲調の音楽を演奏したところ、大変喜ばれたそうです。

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 このように、自分の気持ちに似ている音楽を聴きたくなる原理は、「同質の原理」と呼ばれています。

 人間は悲しい時、「誰か」が自分の気持ちに共感してくれるとホッとするのだそうです。その「誰か」の役目を音楽が担ってくれるんですね。

 そんな安心感を求めて、私たちは悲しい時に悲しい曲を聴きたくなるというわけです。

 逆に、悲しい時に楽しい曲を聴くと、自分の気持ちとのギャップを感じてイライラしてしまいます。

 それは、本当は悲しいのに、「悲しくなっちゃいけないんだ」と自分の気持ちを押し込めてしまうことがストレスになるからだそうです。

 江戸時代の国学者・本居宣長も、こんなことを言っています。

 「悲しいときには悲しいと思え」と。

 そうすることで自分の悲しみを受け入れられ、乗り越えていくことができるのだ、と宣長は言います。

 この言葉を言い換えるなら、「自分の感情に素直になることが大事だ」ということではないでしょうか。

 ただ、いくら悲しい曲が悲しさを和らげてくれるといっても、ずっとそんな曲ばかり聴いていると、その状態から抜け出せなくなってしまいます。

 悲しい気持ちが和らいだら少しずつ明るい曲や楽しい曲を聴いて、気持ちを上向きにすることも忘れてはいけない大事なポイントです。

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 自分の悲しみや怒りを素直に認めて、時には音楽の力を借りながら心を癒やしていく。

 そうやって私たちは気持ちを上向きにすることができ、深い悲しみや強い怒りも乗り越えていけるのだと思います。
最新号

2723号2017年12月18日発行

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