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取材ノート 2702号(2017/07/10)
感動を呼ぶ旅行添乗員

中部特派員 山本孝弘
 数年前に本紙に掲載された㈱日本旅行の営業マン、平田進也さんは観光業界のカリスマ添乗員です。

 年間1億円を売り上げれば一流といわれるこの世界で、平田さんは年間5億円が当たり前。年によっては7億円を超えるといいます。

 彼の企画するツアーは常に笑いが溢れます。バスの中では笑い話をし続け、食事の時は女装をして現れます。

 先日、平田さんの講演を聞く機会がありました。そこで印象的なお話を聞いたのでご紹介します。

◎          ◎


 ツアーの夕食会をより楽しいひと時にするために、平田さんは「お祝い会」をするそうです。

 その日が誕生日の人を前に呼び、皆でバースデーソングを歌います。そして、用意したケーキにナイフを入れてもらうというものです。

 「65年間生きてきてこんなふうに祝ってもらったことは初めてです」と涙した人もいたとのこと。誕生日の人がいない時でも、何か理由を付けて誰かしら前に呼んで祝います。

 数年前のことです。何人かのお祝いをし、夕食会も終わろうとした時、40歳くらいの女性が「母を祝ってください」と手を挙げました。平田さんは2人を前に呼びました。

 「皆さん、今日私が母の車いすを押しているのを見たと思いますが、母は余命半年です。そんな母がラジオで平田さんを知り、『この人と旅行に行きたい』と言いました。父も私も反対しました。みんなに迷惑を掛けるし体の負担にもなると思ったからです。でも死ぬ前にどうしてもというので参加しました。すると全く笑わなかった母が今日笑ったんです。女装した平田さんを見た時は畳を叩いて笑っていました。母が笑ったことを祝ってほしいのです」

 会場のあちこちから温かい「おめでとう」の声が飛び出し、平田さんも優しく言いました。

 「もう病気なんかどっか行っちゃったでぇ。半年後に隠岐の島にうまいもんを食べに行くツアーを企画してんねん。参加してな」

 会場からは、「私もそのツアー行くで。一緒に行こ」とか「明日は私が車いすを押しますよ」などの声が上がりました。

 そんな中、お母さんは平田さんの顔を見ながらはっきりと言いました。

 「半年後、いきたい…」

 娘さんは平田さんの背中にしがみつき、泣き崩れてしまいました。会場は励ましの声と涙で溢れ返りました。

◎          ◎


 お客さんを喜ばせたいという強い思いが、ツアー旅行を忘れられない思い出へと変えていく。

 カリスマ添乗員・平田進也さんのツアーは、感動も添乗させるようです。
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2723号2017年12月18日発行

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