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取材ノート 2707号(2017/08/21)
当たり前を疑え!

編集部 増田翔子
 「いい国作ろう鎌倉幕府」という言葉、1192年に鎌倉幕府が成立したと学習した人にとっては、「常識」のように覚えているものだと思います。

 ところが近年、鎌倉幕府は1185年に成立したという説が有力になっています。すでに「いい箱作ろう鎌倉幕府」という語呂合わせもあるそうです。

 私たちの「常識」や「当たり前」、それって本当に正しいのでしょうか?

◎          ◎


 1960年代、ある実験が行われました。

 1匹のラット(ネズミ)をオリに入れ、二つのボトルを用意します。片方には普通の水が、もう片方には麻薬を混ぜた水が入っています。

 オリの中のラットは麻薬入りの水を好んで飲み続け、たちまち薬物依存になってしまいました。

 この実験により、「薬物には依存性があって、一度使ったらもう戻れない」という常識がつくられました。

 ところが、この実験に1人の心理学者が疑問を持ちました。「なぜ1匹のラットで実験をするのか?」と。

 そこで用意されたのが「ラットパーク」でした。広い芝生、おいしいチーズ、遊具があって仲間もいる、ラットにとっての楽園です。そこでも同じように2種類の水を与えました。

 すると、ラットたちは普通の水だけを飲み続けました。麻薬入りの水を飲んだラットもいましたが、依存症にはならなかったといいます。

 さらに驚くべきことに、薬物依存になったラットを「ラットパーク」に入れると、仲間との活動に熱中し、麻薬に見向きもしなくなったのです。

 依存症の原因は薬物そのものではなく、1匹のラットに孤独を感じさせた「オリ」にあるのではないか…?

 最初の実験によってつくられた常識に疑問を持ったことで、このような新しい考えが導かれたのです。

◎          ◎


 実は「当たり前」を疑って新たな商品を作った、という例は多くあります。

 たとえば、羽のない扇風機。「羽を回転させて風を起こす」という当たり前を疑うことで生まれました。

 またポスト・イット(付箋紙)も、「接着剤は強いのが当たり前」を疑った結果に生まれた商品です。

 新しいアイデアや発想を生み出すためには、「常識」の枠から外れて考えてみることが大事なんですね。

 以前デザインを考える講演を取材した際、発想のコツとして「『こうあるべき』を疑え!」という話も聞きました。

 明日の「常識」は今日の「非常識」から生まれるかもしれない。疑う力の大切さに気付かされました。

 ただ、源頼朝が作ったのが「いい国」ではなく「いい箱」だったなんて、少し拍子抜けな気もします。
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