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取材ノート 2712号(2017/09/25)
おもいだせることは

編集部 増田翔子
 本屋さんに行って漫画コーナーに立ち寄った時、ふと目に留まった表紙がありました。

 『きのう何食べた?』

 「あれ、そういえば昨日何食べたっけ?」と記憶を辿りながら歩いていたら、思い出す前に本屋さんを出てしまいました。 

◎          ◎


 私たちの「記憶」は三つの段階から成り立っているといいます。

 まずは「記銘」、覚える段階です。

 次に「保持」。記銘した情報や知識を保管しておきます。

 最後に「想起」。保持しているものを取り出してくる段階です。

 皆さんも「ど忘れ」を経験されたことがあると思います。これは「記憶力が弱い」のではなく、思い出すきっかけが作れないことによるそうです。つまり「想起」の問題なんですね。

 「昨日のごはん」というすぐ前の記憶はもちろん、「小学校の校歌」など昔のことも、想起の力がうまく働かないと思い出すことができません。

 でも確かに「記銘」されていて、脳のどこかに「保持」してあるのです。

◎          ◎


 ということは、想起に大事なのは「きっかけをつくること」。何かがきっかけになって次々に記憶が引き出されていくのが、想起のおもしろいところでもあります。

 たとえば、ある男性が若い時に好きだった女の子と映画デートをした。それから20年後、テレビでたまたまその映画を観たとしましょう。

 すると、その映画の内容だけではなく、デートに行った日の出来事や感じていたドキドキまで思い出すことがあるのです。「2週間後にはあんなこともあったなぁ」と、どんどん記憶が蘇ってきます。

◎          ◎


 奥にしまい込んだ記憶が久々に思い出された時、私たちはきっとこう呟くでしょう。「あぁ、懐かしい」と。

 実はこの「懐かしい」という感情を抱くのは、とても素敵なことです。

 イヤな思い出を想起しても「懐かしい」とは感じられません。「懐かしい」と感じられるのは、主に楽しかった思い出やワクワクしたことです。

 つまり「懐かしい」と思えることは、その分だけ「幸せ」を記憶している、と言えるのではないでしょうか。

◎          ◎


 大ヒット映画『千と千尋の神隠し』にはこんな台詞があります。

 「一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで」

 大切な思い出も、あの時の感情も、懐かしいと思えるものも、ちゃんと自分の中に存在している。それだけでなんだか嬉しくなりました。
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2723号2017年12月18日発行

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