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取材ノート 2723号(2017/12/18)
不完全である強さ

編集部 増田翔子
 今年1年を振り返ると、全国にいる特派員の協力もあり、いろんな講演を取材することができました。

 その中で、ライフネット生命保険の創業者・出口治明(でぐち・はるあき)さんのお話を聞く機会がありました。たっぷり1時間も設けられた質疑応答の時間で、興味深い質問がありました。

◎          ◎


 【質問】人工知能やスマートフォンが進化している一方でその弊害も感じています。これ以上、それらが進化していくことを怖く思います。先生はどのようにお考えですか?

 出口さんは百舌鳥(もず)の例を出して説明されました。

 百舌鳥は「早贄(はやにえ)」と呼ばれる習性を持っています。たとえばエサであるカエルを2匹捕まえた時、1匹は食べますが、次の日の食料のためにもう1匹を木の枝に刺しておくのです。

 しかし翌日になると、百舌鳥はそのエサを見つけることができません。ですから、ずっと「百舌鳥はアホな鳥だ」と言われてきました。

 ところが最近になって、百舌鳥の脳は人工知能と似ていることが明らかになりました。どういうことかというと、百舌鳥は写真で撮ったようにその状況を記憶しているのだそうです。

 もし記憶した「写真」からわずかでも変化すると、それを異なるものと見なしてしまいます。

 つまり、カエルを刺した木の葉っぱが1枚落ちただけで、その木を認識できなくなってしまうというのです。

 一方、人間は写真のように記憶できません。そのおかげで、久しぶりに会った友だちが太っていても、その人だと判断することができます。それは、いい加減に覚えているからだそうです。

 実はそれこそが人間の脳の強みで、曖昧で不確かだからこそ、人工知能に勝る部分があるといいます。

 そして出口さんは回答の最後にこう言いました。

 「人工知能は自動車のように便利なものです。でもウサイン・ボルトは自動車と競走しようとは思わないでしょう。そもそも使い道が違うのですから、そんなに心配しなくていいんですよ」

◎          ◎


 将来、私たちの仕事の6割が人工知能に取って代わられるといわれています。想像するだけで恐ろしいです。

 ただ、一つ言えるのは「人間は決して人工知能に劣っていない」ということ。

 なくならない4割の仕事は、人間がやることで感動する仕事ともいわれます。私たち人間に「思いやり」や「優しさ」がある限り、そこに仕事は存在し得るのですね。

 不完全な脳を持った私たちだからこそ、「心」というものが与えられているのかもしれません。

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