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取材ノート 2737号(2018/04/09)
叶わなかった高校進学

中部特派員 山本孝弘
 肉体は単なる乗り物であって、本来の自分は魂である。子どもの頃から私はそう感じていました。

 先日、5年前のみやちゅうを読み返していると、スピリチュアル・カウンセラーである神光幸子さんの記事を見つけました。記事を読みながらあらためて「魂」という真理が心に落ちました。

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 7年前に肉体を離れた父の魂は、今どこにあるのか。

 生き方が下手で、反面教師を絵に描いたような父でした。母に迷惑を掛け続け、それでも父なりに生き抜いた73年間は、彼にしかわからない思いの中で日々苦しくもがいていたこともあったのではないかと思います。

 戦後の貧しい時代、5人兄弟の次男として生まれた父は小学生の時に父親を亡くしました。一つ違いの長男と二人、家計を助けるために中学を出てすぐ工場で働きました。父のお通夜の時、末っ子の叔母が涙を流しながら言っていたことを、私は一生忘れないと思います。

 「兄ちゃんは頭がよかった。中学3年の時、先生が家に何度も来て『なんとか高校に通わせてやってほしい』と母ちゃんを説得してた。でもその度に兄ちゃんは『幼い弟や妹のために僕は働きます。高校に興味はありません』って言ったんだよ。兄ちゃん、ありがとう…」

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 私の兄が高校受験をした日は、家族の中で父だけがそわそわしていました。そして合格したと分かった時、父はとても興奮し、「握手しよう」と兄に手を差し出しました。でも思春期の息子というものは素直ではありません。

 「あんな高校、名前を書けば誰だって入れるんだ!」

 そう言い放った兄に父は怒るでもなく、「そんなこと言うな」と、ただ悲しそうに呟きました。

 そのことを兄が覚えているとは思っていませんでした。ですが父が亡くなった日の晩、兄は私に言いました。

 「あの人にとって高校進学っていうのは夢だったんだよな。あんなこと言わなきゃよかった。握手すればよかった…」

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 私が結婚する前、妻の実家に両親を連れてあいさつに行った時はとても不安でした。父が何がしかの失態を演じるのではないかと思ったのです。

 しかし、父は普段とは全く違っていました。その時の父の話は本当に面白く、私を含めみんな大笑いしました。そんな父は見たことがなく、私は驚きました。「自分はこの人のことを何も知らないんだな」と思いました。

 結局、父とお酒を飲むことはありませんでした。今いきなり目の前に父が現れても全く驚かないので、一緒に飲んでみたい気もします。もうすぐ7回目の命日がやってきます。

(中部特派員/山本孝弘)
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