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取材ノート 2749号(2018/07/09)
英語の試験では×だけれど…

中部特派員 山本孝弘
 先日、映画字幕評論家の戸田奈津子さんの話を聴く機会がありました。

 いろいろな苦労話を聴きましたが、台詞を全て字幕にするわけにはいかず、限られた中で的確な日本語を模索して表現するセンスはまさに神業だと思いました。

 翻訳は単に言葉の意味を訳せばいいというものではなく、本来の意図を上手に表現しなくてはなりません。そこには困難もあるでしょうが、プロの妙味もあります。

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 外国映画の邦題の付け方にも難しさがあると思います。それによって観客動員数が左右されるので尚更です。

 ずいぶん前のものですが、アカデミー賞5部門を受賞した『アパートの鍵貸します』という映画があります。タイトルだけで恋愛映画だと何となく分かります。

 この原題は単純に“The apartment”(アパート)です。『アパート』という映画よりも、『アパートの鍵貸します』という映画を観に行く方がわくわくしませんか? 上手い邦題だと思います。

 これも古いですが、『小さな恋のメロディ』という映画もあります。原題は“Melody”(メロディ)です。

 実はこの「メロディ」はヒロインの名前です。それを敢えて『小さな恋のメロディ』としたところに考案者のセンスを感じます。小学生の恋愛を描いた温かい作品でした。

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 反対に、「どうしてそんな邦題を付けたのだろう」と理解できないものもあります。ダスティン・ホフマン主演の『クレイマー、クレイマー』がまさにそれです。

 アカデミー作品賞を獲った名作ですが、この原題は、“Kramer vs. Kramer”です。離婚裁判の話なので、「クレイマー氏対クレイマー夫人」という直訳になるのではないでしょうか。

 当時は理不尽な苦情を言う人を意味する「クレイマー」という外来語はなかったとはいえ、もう少し気の利いた邦題の候補はなかったのでしょうか。

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 映画だけでなく、曲のタイトルにも名訳があります。

 コニー・フランシスの“Too many rules”(多過ぎる規則)という60年代の米国ポップスをご存知ですか? 親が決めた門限や彼との電話時間の制限にうんざりしている青春真っ盛りの少女の歌です。

 この邦題が素晴らしい。『大人になりたい』です。あまりの見事さに唸ってしまいます。

 洋画、洋楽の原題を調べると、そこに職人芸を垣間見ることがあります。一流と呼ばれる人の業はどの世界においても魂が揺さぶられるものですね。

(中部特派員/山本孝弘)
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