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取材ノート 2774号(2019/01/28)
不運を不幸と思わない生き方を

中部特派員 山本孝弘
 先日、NHKのドキュメンタリー番組で桜井昌司さんの特集を見ました。1967年の「布川事件」のおり、冤罪で29年もの間投獄されていた方です。

 名前は知っていましたが、ご本人の映像は初めて見ました。明るい人で驚きました。

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 「高校を半年で中退し、職を転々とする無気力な青年だった」と、桜井さんは自身のことを振り返ります。

 20歳で逮捕され無期懲役囚となった桜井さん。49歳で仮釈放され、その後裁判で無罪が確定したのは64歳の時でした。

 当時の取り調べでは何を言っても信じてもらえず、ついには警察が作ったストーリー通りの自供をさせられました。

 その後、面会に来た父親が持っていた新聞を見た桜井さんはとても驚いたそうです。

 「新聞が嘘を書いている!」、20歳の青年には信じられないことでした。それでも桜井さんは裁判で無実が証明されると信じていました。

 しかし、下された判決は無期懲役。20歳という若さでこのような境遇に陥った彼の心中は、私にはとても想像できません。

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 この裁判に疑問を持った人たちが立ちあがり、支援活動が始まりました。それまで他人と信頼関係を築くこととは無縁だった桜井さんは、最初この活動が信じられなかったそうです。

 桜井さんは言います。「私みたいな背も低くて足も短い受刑者を助けたところで何の得にもならない。それなのに全くの他人が救い出そうと活動してくれた。私は幸せでした」。そして、そんな想いを獄中でも記しています。

 「人間の真心を/真心からの愛を/こんなにも味わえる刑務所は/苦しさが喜びだ/生きる喜びだ」(桜井昌司著、獄中詩集『待つ』より)

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 現在、古希を超えた桜井さん。とてもいい顔をしています。素敵な笑顔を振り撒きながら全国で講演活動をしています。

 その内容は終始明るいものでした。恨み言一つ言わず、時にはマイクを持って自身が作った曲を歌います。服役中、亡くなったお母さんに宛てた唄は涙を誘いますが、そこに暗さはありません。

 桜井さんは自身のことを「冤罪被害に遭ったことを幸せに感じている珍しいタイプだ」と言います。「あのまま生きていても感謝を知らないつまらない人生になっていた」と。
 そして講演では、「誤認逮捕した警察にはいつか感謝状を贈りたい」と言って場内の笑いを誘っています。

 今では口癖になっているという桜井さんの言葉に心を打たれました。

 「私は不運ではあったが不幸ではない」

 不運を不幸だと思わない生き方をする人に真の幸福はやってくるようです。

(中部特派員/山本孝弘)


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