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取材ノート 2776号(2019/02/11)
三絃にかける想い

編集部 野中千尋
 「新しく、長く続けられる何かを身につけたいな…」。年が明けて2週間ほど経ったとき、ふとそう思いました。

 そこで、「いつかやってみたい」と思っていたリストの中から「これ!」と決めたのが「津軽三味線」。そしてその日のうちに宮崎市に本部を置く津軽三味線の一門・村上三絃道の門戸を叩きました。

 今は総師範のお一人である村上華映(かえい)先生のご指導のもと、8月に控えた初舞台「伝統・未来音楽祭」に向けて特訓中です。

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 ある日、「プロの演奏を聴くことも勉強になるかな」とYouTubeで三味線の演奏を探していたところ、一つの動画が目にとまりました。タイトルは「楽しい100歳。」

 動画の主役は、現役最年長・史上最高齢の長唄三味線奏者・杵屋響泉(きねや・きょうせん)さん。御年なんと104歳。医療やヘルスケアの分野に事業展開を始めた富士フイルムが「技術で人を健康に」というテーマで密着ドキュメンタリー動画を作っていたのでした。

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 東京都築地で五代目・杵屋勘五郎さんの一人娘として生まれた響泉さん。幼い頃から長唄の手ほどきを受けて育ちました。しかし4歳の時、勘五郎さんが急逝。響泉さんはお父さんの面影を探すように厳しい稽古を続け、見事に芸を受け継いだそうです。

 ドキュメンタリーでは、作曲家でもあった勘五郎さんが遺した曲「新曲浦島」を後世に伝えるために、演奏会に挑戦するシーンもありました。

 満席の会場の張りつめた空気の中、楽屋での快活さとは別人のようなきりりとした顔で演奏する響泉さん。とても104歳とは思えない、力強い演奏でした。

 「父が作ったものを演奏すると乗り移るんでしょうかね。私の中に父は生きているのね」。響泉さんにとって、この曲を弾くことはお父さんの思いに触れることで、三味線を弾くことはお父さんと対話することでもあるのでしょう。

 「悔しいこと、悲しいこと、あるじゃない。そういう時は一曲やっちゃうの。そうすると忘れられるの。だからあたし嫌なことがあっても泣かない。三味線弾いてる」

 「三味線で生まれて、三味線で生きてきて、三味線で死ぬんだ、あたしは」

 そう話す響泉さんの、激しいほど深い三味線への思いに圧倒されました。

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 津軽三味線を初めてまだ1か月。本番まで半年と考えると「大丈夫かな…」と思うこともあります。でも、一旦お稽古を始めると無心になれるのです。

 家元や先生、先輩方、あるいは響泉さんのように、三味線と一体になって弾きこなしている未来を想像すると「頑張ろう!」と思えます。

 しっとりした長唄三味線と力強い津軽三味線とでは演奏法や曲調がまた違ってきますが、「これから技を磨いて歳を重ねていったら、私はどんな100歳になっているかな」とワクワクしたお話でした。

(編集部/野中千尋)


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