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転載・過去・未来 2668号(2016/10/17)
その3 芸人の心得とは? ~五感にほこりがかぶってないですか~

落語家 三笑亭夢之助
 私が修業を始めて2年目に、師匠から「芸人になるための心得」をいくつか教えていただきました。

 その中の一つが「芸人たるもの、老けてはいけない」ということです。

 これは何かといったら、「観る」「聴く」「嗅ぐ」「味わう」「触れる」という五感に趣味を持った人はいつまでも若々しいということです。

 たとえば、俳優の高倉健さんは70歳過ぎても若々しかった。あの方はビデオを3000本くらい持っていて、ご自宅の一室に大きなスクリーンをはめ込んで、映画館にしていました。

 それと、食べることに関しても長けていて、「おいしいラーメン屋さんができたよ」と聞くと、500円のラーメンを食べにタクシーに乗ってでも行く人でした。

 つまり健さんは「観る」感覚と「味わう」感覚にしっかり趣味を持っていたんですね。

 若々しかった女優さんでいうと森光子さんです。80歳を過ぎても『女の放浪記』という舞台をやっていて、弱冠30歳の「少年隊」の東山君を恋人役にしていましたね。

 そして、SMAPの大ファンで、帽子を被って、サングラスをしてよくコンサートに行っていたそうですよ。

 それから、時間があると27色のクレヨンを出して毎日絵日記を描いていました。ちょっとした時間に編み物をされて、できたものをお弟子さんや付き人さんにあげたりしていたそうです。

 ですから森光子さんは、音楽を「聴く」という感覚と、絵日記や編み物に「触れる」という感覚に趣味を持っていたことになります。

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 評論家の下重暁子(しもじゅう・あきこ)さんも、うちの師匠と同じことをおっしゃっています。「人間が老いるということは、五感にほこりがかぶっていくことだ」と。 

 ほこりがかぶりますと、うまく転換できませんね。たとえば、何かイヤなことがあってムカつくと、一日中、機嫌が悪い人っていますよね。転換ができないんです。

 「今から飲みに行こうよ」と電話がかかってきたら、「もうパジャマに着替えたから今度にするよ」と断る。これも転換ができない人です。

 じゃあ、五感にほこりがかぶっていない典型といったら誰か。赤ちゃんですね。

 赤ちゃんを見てください。「ギャー」と火が付いたように泣いているかと思ったら、ママが来てあやすと、わずか5秒や10秒で笑います。

 五感にほこりがかぶっている人はそんなことはできません。怒ると怒りっぱなしです。だからそのほこりを趣味で取り払ってしまいましょう。

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 もう一つ、よく「おしゃべり上手は聞き上手」と言いますけど、「これはウソだよ」と教えてもらいました。

 おしゃべりは大事なことなんです。ただ、誰かがしゃべっているときはじっと聞きます。そして「今度は俺の番だな」ってところでしゃべり出す。

 おしゃべりというのは、自分がしゃべった後、相手が何を言ってくるか分からないので、脳がフル回転しているそうです。見たり聞いたりするよりも、脳が全部働いているってことなんですね。

 あの120歳まで生きた泉重千代さんも言ってました。

 「長生きしたかったらおしゃべりせい」って。

 ただ一方的にしゃべるのはダメです。相手の話も一生懸命聞いてくださいよ。 

(1999年1月25日号より)


★このコーナーは過去25年のバックナンバーの中から選りすぐりの記事に加筆し、読み切りで転載しています。
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