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転載・過去・未来 2733号(2018/03/12)
その65 なぜそこまでしてトイレ掃除を~鍵山さんに学んだお掃除の精神~

「お菓子の日高」創業者(宮崎市) 日高美恵子
 私は大正15年生まれでして、大分県の中津の女学校を卒業し、終戦の年に宮崎に帰ってきました。

 すぐ戦地から復員してきて県庁に勤めていた人とお見合いしました。当時は一回のお見合いで嫁にいくという風習があり、ご縁があったその人と結婚しました。

 戦後は、専門学校や大学を出た人はどんどん出世していきました。学歴のない主人は「定年まで勤めても課長にもなれない」と言って、県庁を辞め、知人が営むくだもの屋さんで働くことにしました。

 朝は5時から夜は12時頃まで働きました。休みは正月三が日だけでした。10年間働いた後、独立し、今「お菓子の日高本店」がある場所でくだものとお菓子の店を始めました。

 あるセミナーに行ったら講師の先生が「これからは何か特徴のあるものを売らなければだめです。自分でお菓子を作って売りなさい」と言われました。

 それで菓子職人に来てもらい、毎晩夜遅くまでお菓子づくりを習いました。主人は本当によく働く人で、最後は宮崎県菓子工業組合の組合長になりました。

 主人は平成5年10月に亡くなりました。それから毎年10月に主人とお客様に感謝しようと「お菓子の日高文化講演会」を開催していました。

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 ある日、「浜勝(現・濵かつ)」というとんかつ屋さんで、イエローハットの創業者・鍵山秀三郎さんの講演録の小冊子をもらいました。読んで「世の中にはすごい人がいるもんだ」と思いました。それで翌年の文化講演会の講師に鍵山さんをお呼びしました。

 鍵山さんは昭和36年に1人で自動車部品を販売する会社を始めました。最初は自転車の荷台に自動車部品を積めるだけ積んで一軒一軒訪問していかれました。

 ところが行く先々で屈辱的な応対をされます。名刺を渡しても、それを目の前で破り捨てられたり、ストーブに入れて燃やされたりしたそうです。

 その時、鍵山さんは思ったんです。「そういうことをする人は、そうすることで自分の心を荒(すさ)ませているんだな。私のような惨めな思いをしないためには、この世の中から心の荒んだ人を減らすことだ。そのために私のような無力な人間でもできることはないか。そうだ、ごみのない環境を作れば、その分だけ人の心はきれいになっていくはずだ」と。

 それから鍵山さんは朝5時に会社に行ってトイレ掃除から一日を始めるようになりました。

 その後、会社はどんどん成功していって、20年経ったら鍵山さんの会社に全国からいろんな会社の社長さんが掃除を学びにやってくるようになったんです。

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 鍵山さんは「トイレ掃除をさせてください」と学校や駅にお願いしてトイレ掃除をされています。外国に行ってもトイレ掃除をされます。どうしてそこまでしてされるのかというと、「人間は見ているものに自分の心が似てくる」というんです。「汚い環境の中にいたり、汚いものばかり見ていると、自分の心も汚くなる」と。だから「自分の周りの環境を徹底してきれいにしよう」と決められたのです。

 私も店にいて、「お客さんが来ないなぁ」と思ったら、お店のあちこちを掃除し始めます。すると不思議なことにお客さんがどんどんお店に入ってくるんです。私はそれを何度も経験しています。「やっぱり掃除はいいなぁ」と実感しています。

(2004年3月29日号より)


★このコーナーは過去27年のバックナンバーの中から選りすぐりの記事に加筆し、読み切りで転載しています。

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