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転載・過去・未来 2757号(2018/09/10)
その87 車いすで登山~「あの衝撃が僕の人生を変えました」~

NPO障害者自立応援センターYAH!DOみやざき 事務局長 山之内俊夫
 23歳の時のこと。海水浴で飛び込んだ時に前のめりに倒れてどーんと頭が当たり、僕は医大病院に運ばれました。この事故で脊椎を損傷し、僕は首から下に麻痺が残る重度障がい者になりました。

 障がい者になった自分と向き合い、「これも運命かな」と思う日もあれば、「俺はもうダメだ」と思う日もあり、振り子のように気持ちが揺れ動く日々が続きました。

 そんな時に出合ったのが向坊弘道さんの本です。向坊さんは、車いすでシルクロードやインド、ネパールにも行っていました。「こんな人もいるんだ。自分もできるかもしれない」と少し勇気が出ました。

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 リハビリテーションセンターに入所した僕は、進路相談で「仕事をしたい」と言いました。しかし、「雇用はどの会社もトイレやお風呂を自分でできることが最低条件です」と言われました。

 「じゃあ、僕の残された道は?」と聞くと、「親と一緒に暮らすか養護施設に入所するしかないですね」と言われてしまいました。

 向坊さんに連絡しました。向坊さんは、東京の障がい者自立支援センターの人で、一人暮らしをしている藤木さんを紹介してくれました。

 藤木さんも首から下が動かず、ヘルパーさんや大学生のボランティアの人に介護してもらいながら生活しているとのことでした。

 会いに行くと、藤木さんは僕に「とにかく一人暮らしをしろ」と言いました。そして僕は多摩市で一人暮らしを始めたのです。

 ある時藤木さんが「山に行こう」と誘ってくれました。

 てっきり僕は「車で行って、景色のいい所でおにぎりでも食べるのかな?」と思っていました。

 でも実際は、学生のボランティア十数人がいて、その人たちと一緒に僕たちの車いすを担いでもらったり、引っ張ってもらったりしながら山を登りました。

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 かかった時間は普通の人の約3倍です。学生たちはみんな汗まみれ、服は泥まみれ、そして手にマメをつくりながら引っ張っていってくれました。

 下山した時には、みんなすっかり精も魂も尽き果てていました。

 僕は罪悪感でいっぱいで、登山の間ずっと「申し訳ない」「ごめんね」と謝ってばかりいました。

 でも藤木さんにそんな申し訳なさはありませんでした。そればかりかみんなに、「おい、まだ休んでるのか。早くしないと日が暮れるぞ」とハッパをかけているのです。

 学生たちのほうも藤木さんに遠慮はなく、笑いながら「このわがままじじい」とか冗談を返していました。

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 後日、打ち上げ会が開かれ、同じメンバーが集まりました。

 みんな笑い合いながら楽しそうに話し、「また登ろうぜ」と言っていました。藤木さんも同じように嬉しそうでした。

 僕は大きな衝撃を受けました。

 「車いすで登山」の企画は、それまでにも参加したことがありました。でもそれは、障がい者が最後に「皆さんのお陰で山に登ることができました」とお礼を言い、周囲もそれに拍手するというものでした。

 でもそれとは違う藤木さんたちの姿を見た時、それまでの僕の考え方や価値観がいっぺんに変わってしまったのです。

 そして僕の心に、新たなチャレンジの気持ちが生まれました。「よし、次はアジアだ!」と。

(2001年1月1日号より)

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