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転載・過去・未来 2758号(2018/09/17)
その88 心温かきは万能なり~寒いみぞれの日の心温まる出会い~

株式会社イエローハット創業者 鍵山秀三郎
 「箸よく盥水(ばんすい)を回す」という言葉があります。「盥水」というのは盥いっぱいに汲んだ水のことです。

 盥いっぱいの水に細い箸を入れ、回します。最初は箸が回るだけですが、やがて小さな渦ができます。さらに回し続けると、渦はだんだん大きくなり、最後には盥全体の水が回り始めます。

 回し続ければ、たった一本の細い箸でも盥いっぱいの水を回せるのです。小さなことでも、あきらめずに徹底してやり続ければ大きな力になっていくということです。

 私がなぜ人生を賭けて掃除に取り組んできたのか。それは、これまで私自身が散々な目に遭って惨めな思いをしてきたからです。

 私と同じような思いをする人たちが、この世の中から少しでも減って欲しい。そんな願いを持ちながらやってきました。

 でも、世の中は悪い人ばかりではありません。とても心の温かい人にも出会ってきました。

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 昭和37年2月、みぞれの降るある寒い日のことです。私はカッパを着て自転車に荷物を積んで行商に出ました。

 ある家の前で自転車を止めました。カッパを脱いで入っても、断られたらまたすぐ着なくてはいけません。ですから、まずは入れてくれるかどうか確かめるために玄関の戸を開けました。

 するといきなり手が出てきて、私の濡れた手を掴みました。そしてとても優しい声で、「今日は寒いでしょう。中にお入りなさい」と言い、私の手をそのままぐっと引っ張りました。

 私は、「濡れたカッパを脱がなければ」と思いました。でも強く引っ張られるのでそのまま入りました。

 その方は、真っ赤に燃えているストーブの前に私を連れていき、「手が冷たいでしょう。当たりなさい」と言いました。そして「お上がりなさい」と言って、串に挿しただんごを三つ持ってきてくださいました。

 「ありがとうございます」とお礼を言おうとしたのですが、喉の奥が締め付けられたような感覚になり、声が出せませんでした。私はただ、だんごを手に持ったまま何度も頭を下げました。

 「世の中には何と心の温かい人がいるのだろう」と、私の心もとても温かくなりました。

 後で分かったのですが、その方は歌手の藤山一郎さんでした。テレビに出ている時と全く変わらない明るい声の方でした。

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 「心温かきは万能なり」といわれます。どんな地位や肩書き、学歴、知識、才能よりも、「心が温かい」ことが人間にとって一番価値あることです。これに勝るものは何もありません。

 心の温かい人は、多くの人たちの心を癒やすことができます。そのために私は、世の中を少しでもきれいにして、心が温かく優しい人を作りたい、そういう願いを持っているのです。

 今、私のこうした考えに共鳴し、いろんなところでご支援してくださったり、一緒に肩を組んで行動してくださる方が増えています。

 この宮崎でも「掃除に学ぶ会」ができました。まさに「箸よく盥水を回す」だと思います。

 箸のように細く小さなものでも、回し続けることが重要なのです。どんな小さなことでも、やり続ける、やり通すことで変わっていくということを忘れないでください。

(2000年2月1日号より)

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