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転載・過去・未来 2769号(2018/12/10)
その99 生きたお金~画家ジミー大西を育てた女性マネージャー~

吉本興業㈱ 取締役会長(故人) 中邨秀雄
 うちの会社に、ジミー大西というタレントがいます。

 彼に付いている女性マネージャーが、ある時「ジミーに300万円貸してやってください。スイートルームに泊まったホテル代です」と言うんです。1泊30万円の部屋に1週間泊まり続け、食べ物はすべてルームサービスでした。

 「死に金や」と思いましたが、放っておくのも会社の恥ですから、「すぐに払ってこい」と言って300万円を渡しました。

 ジミーとマネージャーが、お金を払ったその足で私のところにお礼にまいりました。
 「なんでこんなバカなことしたんや」と私が怒ると、ジミーは下を向いて黙っておりました。するとマネージャーが答えました。

 「ジミーは、これも芸の肥やしやと思って泊まったらしいです」

 「芸の肥やし」とは、企業で言えば「研究開発費」です。「実に上手な言い訳だな」と感心しました。

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 またある時、そのマネージャーが「渋谷の画廊でジミーの個展をやりたい」と言ってきました。

 お客は誰も来ないだろうと思っていましたが、個展の初日、画家の横尾忠則さんがテレビで「この絵を描いた奴は第二の山下清になるかも」なんておっしゃったので、大勢の方が来場しました。

 通常こういった個展では、絵が売れると「売却済み」の札を付け、個展の期間終了後にその絵を持っていきます。しかし、ジミーはお金がないので片っ端から作品を渡し、お金にしていきました。

 ですから、当初は10日間の開催予定でしたが、1週間で完売し、個展が終わってしまいました。

 ジミーに、「あの絵のモチーフや色使い、どこで考えたんや?」と聞きました。ジミーは黙ったまま下を向いていました。

 すると、またあの女性マネージャーが言いました。「あの時のホテルのスイートルームで考えてたらしいです」と。

 「うまく結びつけたもんやな」と思ってまた感心しました。ジミーを育てたのは、まさにこの女性マネージャーだったのです。

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 その後、そのマネージャーから、「ジミーがタレントを辞めて、絵の勉強をしにアメリカに行きたいそうです」と言われました。

 「本人が行きたいのならすぐに行かせたらええ」と言うと、彼女は、「タレントとしての仕事がまだ残っているので待ってください」と言うので、6か月間待ちました。

 その間、スポーツ紙に書かれたり出演番組で本人がしゃべったりしたので絵の注文がわんさか来て、ジミーには4000万円のギャラが入りました。

 アメリカに行ったジミーはその後スペインに行き、バルセロナでピカソの孫と知り合いになって個展まで開きました。これが大変盛況でした。

 これに朝日新聞社が目を付け、絵を全部日本に持ってきて、全国9都市で絵画展を開きました。 20数万人が会場を訪れ、作った立派な画集も飛ぶように売れました。

 こうしてジミー大西は立派な絵描きになっていきました。

 何を言いたいかというと、「お金」です。勝手にホテルのスイートルームに泊まり、「これは死に金や」と思って出した300万円で彼の才能は見出された。

 そしてそれが後になって、「生きたお金」として何倍にもなって手元に返ってきたのです。

(2002年12月2日、9日号より)


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