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転載・過去・未来 2778号(2019/02/25)
その104 日本人初の宇宙飛行士~「だから私はテレビ局を辞めました」~

ジャーナリスト/宇宙飛行士 秋山豊寛
 1990年12月2日午前11時13分32秒(現地モスクワ時間)、これが私が宇宙に出発した時間です。

 乗っていると、ロケットというのはピューッと発射するのではなく、ヨタヨタ、シューという感覚でした。

 ですから発射台を離れた衝撃もあまりありません。しかしその後どんどん加速し、体重の3倍から4倍の力がかかってきます。

 私たちが乗ったロケットの打ち上げは順調でした。8分50秒後には地上200キロメートルに達し、48時間後には高度400キロメートルの宇宙ステーション「ミール」とのドッキングに成功しました。

 こうして私は日本人初の宇宙飛行士となりました。

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 宇宙に出てまず感動したのが地球の青さです。これは「大気の青さ」なんです。

 太陽光が大気に入ると、青い波長の光が最初に拡散します。だから空は青く見えるのです。

 太陽光が低い角度で大気に入ると、今度は赤い波長の光が拡散します。だから朝焼けや夕焼けは赤く見えるんです。

 この大気の層は、実はかなり薄いです。地球をリンゴの大きさで考えると、大気はその薄く剥いたリンゴの皮よりも薄いんです。

 その大気が地球を取り巻くことで地球は青く輝き、またそれに包まれることで人間の命を含めた地球上のすべての命が守られている。その実感が私の心に突き刺さりました。

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 9日間の宇宙の旅でした。「ミール」は秒速約8キロで飛び、90分で地球を一周するので一日に地球を16周します。

 その90分間の半分は、太陽が面する昼の時間です。

 残りの半分のうち、3分の1は薄明、つまり太陽が出ていない薄明かりの状態です。そして真っ暗な闇の時間がやってきます。

 秒速約8キロで飛ぶ「ミール」から見る星空は、まるでプラネタリウムの早回しのようでした。

 星たちはまたたきもせず、丸い光で一つひとつ色が違います。ブルーや薄いピンク、あるいはベージュの美しい光でした。

 地球が迎える夜明けの光景にも感動しました。

 地平線から濃いピンクの光がピカッと差し込んだかと思ったら、その直後、この世のものとは思えないほどの美しい黄色、濃い赤、オレンジ、ピンク、緑、紫など様々な光の渦が地球を照らし出すのです。

 その時、「ミール」はちょうどカリブ海の上空にありました。そしてしばらくすると、大西洋やヨーロッパ大陸が照らし出されてきました。

 一連の光景を見ながら、「私が生まれたこの星はこんなにきれいだったのだ。たしかに地球は生きている」と興奮しました。

 そして考えました。

 「でも自分という存在は、この地球の歴史といったいどんな関係があるんだろう?」と。

 「私は会社の環境問題プロジェクトの一環で、地球が傷ついた実態を訴えるためにこの宇宙にやって来た。だったらまず自分自身が地球を修復する行動を取るべきなんじゃないか。それによって初めて私の伝える言葉に重みが出てくるんじゃないか」と。

 そして、地球に戻ってきた私はその5年後、テレビ局を退社し、福島県滝根町の山の中で農業を始めました。

(1998年3月30日号より)


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