ホーム記事一覧転載・過去・未来

転載・過去・未来 2780号(2019/03/11)
その106 笛の音に喜びをのせて~不自由さを少し知ってくれればいい~

オカリナ奏者 さくらいりょうこ
 クローン病と診断された時、私は21歳でした。医師から「治療法のない難病」と言われました。

 クローン病は、小腸と大腸に縦走潰瘍とよばれる深い難治性の潰瘍ができ、ひどくなると口から食べ物が通るたびに消化器管すべてに潰瘍ができ、食べ物の栄養の吸収ができなくなる病気です。

 すぐに入院し、24時間の点滴が始まりました。水も飲めない、食べ物も食べてはいけない、絶飲絶食の治療です。

 「なんで水飲んだらあかんの。なんで食べ物食べたらあかんの。もうお腹痛くないよ」

 そう言うと主治医は、「お腹の中はキズだらけや。食べ物を食べたらそのキズに当たって、治りかけたキズがまたえぐられてなかなか治らへん。ひどくなると出血したりするんや。だから口から食べ物を入れるのをやめるのが一番」と言いました。

 1か月後、私の前にようやく出てきた食事は「おもゆ」でした。ご飯粒のないおかゆです。そして栄養指導が始まっていきました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私たちクローン病の患者が食べられるのは、消化吸収のよいお豆腐やうどん、白身の魚など、普通の人が食べられる品目のうち、10分の1くらいしかありません。

 キノコや海草などはお腹のキズをひどくするので「絶対禁止」です。「できれば一生、何も食べないほうがいい」と言われました。

 現在の全国のクローン病患者は4万人以上といわれます。私が発病した30年前は6千人でした。

 クローン病は移る病気ではなく、外見上は健康な人と全く変わりません。

 近年、医学の進歩によって、生まれつき遺伝子の並び方が少し違うことが分かってきたり、過剰なストレスが引き金になって発病するともいわれています。

 私はコンサートで、病気や障がいのことで困っていることを話していきたいと思いました。

 でもあまり知識もなく、つらいことや困っていることって人によって違うので、どうしたらいいか、とても悩みました。

 すると、みんな同じことを私に言ってくれました。

 「僕たちが少しだけ不自由なことを皆さんが少しだけ知ってくれるだけで、僕たちは社会に一歩出て行ける」と。

 そのうち、テレビのドキュメンタリーや映画でいろんな難病について取り上げてもらえるようになりました。

 知ってもらうということはとても大事なことだと思いました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 人生の半分以上を、私はこの病気と共に歩んできました。

 発病当初は病気とケンカしてばかりでした。でもようやく「この病気と一緒に付き合っていこう」と思えるようになりました。そして、今はこんなふうに思っています。

 「病気がなかったら、私はこんな幸せを味わえなかった。たくさんの人の支えで私は今演奏できる。みんなに聴いてもらえるって本当に幸せなこと」と。

 私は今、「笛を吹く」という原点に立ち戻り、オカリナ奏者として生きていく決意をしました。

 これからも、笛の音に喜びをのせて、皆さんに届けてまいります。

(2008年3月17日、24日号より)


2780muryo.jpg
お友達紹介
2780号
    カレンダー
    <前月  2019年03月  翌月>
     
     
     
     
     
    1
    2
    3
    4
    5
    6
    7
    8
    9
    10
    11
    12
    13
    14
    15
    16
    17
    18
    19
    20
    21
    22
    23
    24
    25
    26
    27
    28
    29
    30
    31
     
     
     
     
     
     
    ブログ
    • 水谷もりひとブログ
    • くるみノート
    • とね書
    • スタッフブログ