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転載・過去・未来 2782号(2019/03/25)
その108 人生をデザインする~ドラマの主役が持つ二つの条件

作家 ジェームス三木
 これまでNHKの大河ドラマなど、さまざまなドラマの脚本を書いてきました。私がどんな人物を主役にするかというと、その条件は二つあります。

 一つ目は、「トラブル解決能力がある人物」です。

 ドラマはさまざまなトラブルで物語が成り立っています。もめごと、けんか、ジレンマ、葛藤、対立、こういうのがドラマのネタになります。

 そしてトラブルが頂点に達するクライマックスでトラブルを解決する人、その人がドラマの主役になるのです。

 一方、トラブルから目を背ける人、避ける人、逃げる人、これは脇役、あるいは「通行人」です。

 社会でも同じで、職場で何か問題が起きた時にそれを解決できる人が「仕事ができる人」となります。このトラブル解決能力を身に付けさせることが教育だと私は思っているのです。

 では、具体的にどうすればいいか。

 それには、トラブルを与えてそれを乗り越えさせるのが一番です。そのためには、「ちょうどいいトラブル」であることが大事です。

 3歳の子には3歳にちょうどいいトラブル、中学生には中学生に合うトラブル、新入社員には新入社員にふさわしいトラブルがある。それをうまく与えるのが親や教師、上司の役目です。

 私は出版社や放送局で、大卒のいわゆる「優秀な若者」と仕事をすることも多いです。彼らはややもするとトラブルに弱かったりします。

 しかし、中学や高校を卒業してすぐに社会に出た人たちの場合、数年経つと頼もしく変貌していたりするんです。きっと社会のさまざまなトラブルを乗り越えたことでたくましくなっていったのだと思います。

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 条件の二つ目、それは「その人の人生を持っている人物」です。

 たとえば、江戸時代には「いかに生きるべきか」「何をもって己を律すべきか」という人生観について考えている人が多くいました。

 そこから、慎み、潔さ、奥ゆかしさ、気品、節度など、日本人としての美徳や、「ものの哀れ」「わびさび」などの文化も生まれました。

 しかし、戦後復興の中で「生活の向上」が主に人生のテーマになったことで、日本人はこれらの文化の多くを失いました。

 私は、人生において大事なのは個人の文化を集積させていくことだと思っています。

 「カレーライスにかけるのはしょうゆじゃない。ソースだ」とか、「焼酎を割るのはやっぱり炭酸」みたいな、自分流のやり方やこだわり、スタイルをたくさん持つということです。

 それは、「自分の人生の持ち時間をどうデザインするか」ということであり、それがビジョンやポリシーとなるのです。

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 総理大臣が就任するとよく言います、「政治の最重要課題は景気回復です」と。でも一国の総理ともなれば、「日本人はいかに生きるか」「どんな理想を掲げて生きるべきか」をまず語って欲しいと私は思います。

 いかに生きるか、どんな理想を持って生きるか、これは文化の原点です。政治や経済は、その文化を支える手段です。

 「自分の持ち時間をどうデザインしようか」と考えると、人生の景色が変わってきます。そのことで、「自分は人生のドラマの主役」という自覚を持って生きられると思うんですね。

(1998年10月5日号より)


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