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転載・過去・未来 2798号(2019/07/22)
その124 私と社会はつながっている~わたしのせいかもしれない~

魂の編集長 水谷謹人
 図書館の児童コーナーをぶらぶらしていると、たまにハッとさせられる本に出会う。

 『あなたへ』という絵本もそうだった。シリーズ本になっていて、著者はスウェーデンのとある町の教育長だった人だ。社会科の教師時代からこのシリーズを描き始め、教育長時代も、退職後も描き続け、全15巻になった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その中の6巻が『あなたへ~わたしのせいじゃない』である。

 1人の男の子が泣いている。その子の後ろに14人のクラスメイトが立っていて、ページをめくる度に、1人1人が「彼が泣いているのは私のせいじゃない」と弁解している。

 ある男の子は言う。「始まった時、見ていなかったからどうしてそうなったのか僕は知らない」

 別の子は言う。「僕は怖かった。何もできなかった。見ているだけだった」

 言い訳は続く。「大勢でやっていたのよ。1人では止められなかったわ」

 「始めたのは私じゃない。他のみんなが叩き始めたのよ」

 「その子が変わっているんだ。他の子はみんな普通なのに」

 「その子は一言もしゃべらなかった。僕たちを見つめていただけっだった。叫べばいいのに」

 そしてこう続く。「だからわたしのせいじゃない」

 14人の弁解が終わった後、次のページをめくると、戦争の生々しい写真が現れる。敵の兵士に囲まれた1人の青年が目隠しされて座っている。銃殺される直前の写真だ。

 さらにページをめくると、煙突から猛烈に煙を吐き出す工場の写真、原爆の写真、そして飢餓で苦しむアフリカのどこかの国の子どもの写真と続く。

 そしてこの本のタイトルが出てくる。「わたしのせいじゃない」

 この絵本は、生き方や人間関係、社会問題などを扱う教科の副読本として小・中学校で使用されているそうだ。一体どんな授業なのだろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 20世紀は激動の100年だった。戦争があり、その後の混乱と貧困、急激な経済成長とそれに伴う環境破壊。

 学校も混乱を極めた。不登校の児童・生徒は10万人を超え、ひきこもりや学級崩壊、そしていじめによる自殺もマスコミを賑わせた。援助交際をする女の子や凶悪犯罪に走る男の子も大人を震撼させた。

 知識人はテレビで「政治が悪い」「行政が悪い」「教育が悪い」「家庭が悪い」「今どきの子どもは問題だ」と好き放題しゃべりまくっていた。その顔にはこう書かれてあるようだった。「わたしのせいじゃない」

 その絵本は決して「あなたのせいだ」と言っているわけではない。生き方や人生観を確立していく上で、根本的なテーマとなる「自分と社会との関わり」を考えるきっかけを与えようとしているのではないか。あるいは、戦争や闘争、いじめや差別、環境破壊などを起こす因子を誰もが持っているということに気付かせたかったのではないか。

 一番小さな社会である家庭からはじまって、地域社会や県とか市町村、そして国や世界など、そこに横たわっているさまざまな問題に、「私」という存在はどう関わっているのだろうか。

 少なくとも時々悲しい事件が起こると、「みやざき中央新聞が広がっていないせいだ」と思えてくるのである。

(1998年9月7日号社説より)


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