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転載・過去・未来 2799号(2019/08/05)
その125 ダイアログ・イン・ザ・ダーク~暗闇の中で立場を入れ替える~

ダイアログ・ソーシャル・エンタープライズ創始者&CEO アンドレアス・ハイネッケ
 ラジオ局で働き始めるようになった私は、上司から、「視覚障がいを持つ男性が入ってくるので、彼が働けるよう訓練してほしい」と言われました。

 それを聞いて、「目の見えない人生なんて価値がない」「自分が視覚を失ったら自殺するかもしれない」と私は思いました。

 彼のアパートを訪ねました。背が高く、長髪で、革ジャンを着て出てきた彼は、とても盲目には見えず、楽しんで生活しているように感じられました。

 部屋に入ると彼は椅子に腰かけ、たばこを取り出し、火をつけました。そして部屋の中を歩き回り、私にコーヒーをいれてくれたのです。

 ごく自然な日常を過ごすその姿に私はとても驚きました。そして自分のことをとても恥ずかしく思いました。

 彼のことをよく知りもしないで、単に「目が見えない」というだけで、彼に対して偏見や差別の気持ちを持ってしまっていたからです。

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 ラジオ局の一室で彼と居合わせたことがあります。そこは明かりのない暗室のような部屋でした。

 その時、不思議なことに、彼に頼っている自分がいました。そして気付きました。

 「彼は暗闇の中ではすごい能力を発揮できるのだ」と。

 光のある世界では、目の見える人が目の見えない人をサポートします。しかし、真っ暗闇の世界では、両者の立場は完全に入れ替わるのです。

 そのことを実感してもらうために、「暗闇の中に健常者を入れて視覚障がい者にガイド役になってもらおう」と考えました。

 それは、目の見える人にとっては自分たちの弱点や限界を感じる場です。でも目の見えない人にとっては、「今まで隠れていた大きな能力が発揮される場」なのです。

 そういった経験は、今までとは違う視点の発見や、目の見えない人に対する尊敬心を生み出すいい機会になると考えました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 このプログラムを「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」と名付け、1988年から取り組んでいます。

 真っ暗闇の中、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って体験するエンターテインメント形式のワークショップです。

 これまで世界41か国以上で開催され、900万人を超える人々が体験しています。日本では1999年11月の初開催以降、21万人以上の人々が体験しました。

 DIDの暗闇は「照度ゼロ」です。たとえ1週間その空間に居続けても一筋の光も見えないほどの「完全な暗闇」です。

 実際その暗闇に入ると、あまりに何も見えないので参加者の皆さんがビックリし、暗闇のいたるところでどよめきが起こります。

 「とにかく声を出してください。グループのみんなに、自分がどこにいて何をしているか、自分の名前とともにどんどん伝えてください」

 そんなスタッフの導きにしたがって、互いに声を出しながら白杖(はくじょう)を手に持ち暗闇の中を進んでいくのです。

 しっかり声を出して自分の場所を伝えたり、声が聞こえる方向に意識を傾けたりすることで、次第に暗闇の中でも相手がどこにいるのか分かるようになっていくんですね。

(2013年8月19日号、9月2日号より)

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