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転載・過去・未来 2803号(2019/09/02)
その129 会話は粋に~しゃれた返しにぐっと来た~

人権団体「のりこえねっと」共同代表 辛淑玉
 私はある時期、アメリカでNPOのボランティア活動をやっていたことがあります。

 その時一度も聞かれなかったけれど、日本と私の故郷である韓国では必ず聞かれることがあります。それが「辛さん、いくつ?」です。

 アメリカで働いていた時には、年齢はもちろん、性別や国籍、宗教、家族構成など、そういったものも一切、一度も聞かれたことはありません。

 聞かれるのは「あなたはどんな仕事ができるの?」だけです。その能力によって仕事が与えられるのです。

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 「辛さん、いくつ?」と聞かれた時、最初私はその質問を無視していました。

 でもあんまりしつこいので、そのうち「いくつ?」と聞かれたら「いくつに見えます?」と聞き返すことにしたんです。

 そしたら、面白いですね。多くの男性というのは「女性は見た目の年齢よりちょっと若く言うと喜ぶ」と思っていて、たいがい「30歳くらいかなぁ」と言うんです。

 私が「違います」と言うと、「じゃあ、33歳かな」と言います。

 「いいえ」と言うと、今度は、「じゃあ、36歳かな」と言いました。

 「なんで3歳刻みなんだ?」と思いながら、その時は39歳だったので「39歳よ」と言いました。

 すると、その後の反応がまた面白いんですね。韓国でも日本でもだいたい同じで、「いやぁ、お若く見えますね」です。

 それを聞いて私は、「でも『若く見える』は本当に若い人に対しては言わないよなぁ」と思ったんですね。

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 阪神大震災の後、神戸に「外国人地震情報センター」というボランティア活動のグループができました。そこで、あるパーティーが開かれました。

 私はお酒を飲んでちょっと酔っ払いながらサンバを踊っていました。

 すると、日系ペルー人の方が近寄ってきてこう言いました。

 「辛さん、いくつ?」

 「あらまぁ、この人、日本人の血が入っているからこんなこと聞くのかしら?」と思いながら、「いくつに見える?」と踊りながら言いました。

 彼は、「30歳かなぁ」と言いました。

 「違う、違う」と私が言うと、次は「35歳かな」と言いました。

 「あらっ、5歳刻み。ちょっと日本人と違うぞ」と思いながら、その時は38歳だったので、「私、38よ」と言いました。

 そしたらその後も日本人と違うんです。彼はこう言いました。

 「ボクはその年が一番好きです」ですって。どうです、返しがしゃれてるでしょ(笑)。

 そして彼は、帰る時に私の手のひらに軽くキスをしました。

 私も嬉しかったので、「私は今日はこの手を洗いません」と言うと、彼はもっと上手(うわて)でした。

 「ボクは一生この口を洗わない」

 会話はね、こういう粋(いき)なやりとりが大事なんです。

 ところが日本の男性は、その辺があまりうまくないんですよね。「好きだ」も「ありがとう」もあまり言いませんよね。

 「心の中で思っているから言わなくても…」と言う人もいますが、思っているからこそ口に出して言って欲しいんです。

 言葉にしないと相手に伝わらないんですから。

(1999年4月19日号より)


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