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転載・過去・未来 2819号(2020/01/13)
その144 音楽の持つ力~「母ちゃん、思い出してくれたんか?」~

音楽療法士 高本恭子
 音楽療法とは、「音楽を薬にして、心身の障害や知能の回復、機能の維持・改善に使われる一つの治療法」です。

 「音楽を薬にして」と申しましたが、「薬になる音楽」というのは、何でもいいわけではありません。知的障がいの方、心の病気になってしまった方など、患者さんの状態によって使用する音楽は違ってきます。

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 私のインターン時代のお話です。72歳の女性の患者さんで、認知症で内科に入院されている方がいました。

 彼女が車いすでホールに出てこられた時、窓からきれいな夕焼けが見えました。彼女は、その真っ赤な夕焼けをどこか懐かしそうに見つめておられました。

 私は「この人、もしかしてこの曲だったら歌えるかな?」と思って、『夕焼け小焼け』を演奏しました。

 最初のうちは、口をパクパクするだけで歌詞を思い出せません。しかし私は何回も何回もオルガンを弾き続けました。そのうちに、彼女は少しずつ歌詞を思い出していきました。

 1時間くらい経って、彼女は『夕焼け小焼け』の1番を全部歌えるようになりました。そして1時間20分くらいすると2番まで全部思い出しました。

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 彼女の息子さんはとても親孝行な方で、毎日仕事帰りにお見舞いに来られていました。
 息子さんが優しく声を掛けても、彼女はいつも「どこのどちらさまか知りませんが、ご親切にありがとうございます」と言っていました。

 ところがある日、びっくりすることが起きました。いつものように息子さんが、「母ちゃん、よかったなあ。今日は先生に歌を教えてもらったそうやなあ」と声を掛けました。
 すると彼女は、「あらあ、よっちゃん、来てくれたん」と言ったんです。

 驚いたのは息子さんです。「母ちゃん、俺の名前を思い出してくれたんか?」と叫びました。すると彼女は、当たり前のような顔をして、「そうや、あんたはよしおやでえ」と言ったのです。

 次の日から、彼女が子どもの頃から今までに歌ったであろう曲を、キーボードやCDを使いながら聴かせていきました。

 すると、30日くらいで自分の生年月日や住所、家族構成など、ほとんど私生活に支障がないくらいのことを思い出していったのです。

 35日目にその患者さんは退院していきました。

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 皆さん、夜よく眠れていますか? 夜よく眠れる人は体が疲れている人です。逆に夜よく眠れない人は、脳が疲れている人です。そういう人は脳の疲れを取ってあげなければいけません。脳の疲れを取るためにいいのが、『愛燦々』という美空ひばりさんの曲です。

 脳が疲れると、いいことを考えられなくなってマイナス思考になってしまい、うつ病にもなりやすくなります。

 うつ病というのは、脳にブレーキがかかった状態です。そういう時には、心がほっとして優しくなれるような曲がいいんですね。

 この曲は、特に中高年世代の方に大変有効です。

(2004年2月7日号より)


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