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転載・過去・未来 2825号(2020/02/24)
その149 弱者が勝者になるために~ヤクルトが日本一になれた理由~

元ヤクルトスワローズ監督(故人) 野村克也
 今年(1997年)のシーズン前、多くの専門家が「優勝は絶対無理」と予想したのがわがチームでした。ですが結果は日本一でした。前年は4位で、新しい戦力補強もわずかなものでした。

 一方、優勝候補ナンバー1は巨人です。実力のある選手がたくさんいるので当然です。 

 では、われわれが勝つためにやったこととは何か。それが「当たり前のことを当たり前にやる」ということでした。

 私はプロテストで入団し、契約金もなく、月給たった7000円からスタートしました。

 何の保証もない中、一年一年実績を積み上げ努力しました。その中で貫いたのも、「当たり前のことを当たり前にやる」でした。「理(り)」に基づいて行動すれば自ずと道は見えてくるのです。

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 チームは、実力のあるメンバーを集めればいいというものではありません。「功ある者より功なき者を集めよ」という格言がありますが今年のヤクルトもまさにそうです。「功績のない」者たちがうまく機能した。だから日本一になれたのです。

 今年、巨人に、西武ライオンズで活躍した清原和博が移籍してきました。

 彼は長年、西武の思想と環境の中で育った選手です。それを連れてきたからといってすぐ活躍できるわけではないのです。

 チームとは「授かるもの」ではなく「手作りで作り上げていくもの」なのです。

 さらに、優勝というのは「強いか弱いか」で決まるのではありません。「優勝にふさわしいかどうか」で決まるものだと思っているんですね。

 では、ヤクルトは今年優勝にふさわしいチームだったから優勝したのか。そうではありません。他チームが「それ以上にふさわしくなかった」からなんです。

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 私は昭和10年生まれの古い人間で、「時代が変わってもいいものはいい」という信念を持っています。だから日本シリーズで対戦チームの選手たちの茶髪や金髪、長髪を見て「こんなチームに負けてたまるか」と思いました。

 選手はある程度なら自分の主体性を出していいけど、団体競技ですからまとまりも必要です。

 そもそも、野球に全精力を傾けていれば髪型に手をかけたりはしません。ですからわがチームでは茶髪や長髪は禁止です。

 そんなうちの選手たちのためにも負けるわけにはいきませんでした。

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 日本シリーズの時、私が審判に抗議するために出ていくと、相手チームから汚い野次が飛んできました。「このデブ、引っ込め」と。

 極めつきは第5戦でした。試合前のセレモニーで国旗掲揚や君が代斉唱を球場全体で行います。その最中に、相手チームの投手と捕手がピッチング練習をしていたのです。

 常識的にその時だけでも練習はやめるもんでしょう。でも彼らは平然と続けていたんです。それを見て、また「絶対こんなチームに負けてたまるか」と思いました。

 ですから日本一になってヒーローインタビューのお立ち台に上がった時、「本当に勝てて良かった」と思いました。

(1997年11月24日号より)


※野村さんは今年2月11日、心不全で逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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