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転載・過去・未来 2833号(2020/04/27)
その154 志村けんの影響力~「最初はグー」なら「最後もグー」

魂の編集長 水谷謹人
 何かを決める時によく使う「じゃんけん」のようなものは世界中にあるが、初めに「最初はグー」と声を揃えて言うのは日本人だけだそうだ。

 この「最初はグー」と声を揃える人たちが、ある時期を境にじわじわと増え続け、その勢いは親から子へと伝わり、今や「いきなりじゃんけん」派の人口を超えているという。

 その「ある時期」とは、伝説のお笑い番組『8時だヨ! 全員集合』の全盛期である。あの番組の中で志村けんが広めたのだ。

 当時、ドリフターズのメンバーは番組終了後にみんなで飲みに行っていて、最後に「誰が支払いをするか」をじゃんけんで決めていたそうだ。みんな酔っ払っているので後出しする人もいた。そこで志村けんが「最初はグーだよ」と号令を掛け、「最初はグー! じゃんけん、ポン!」とやったところ、全員の呼吸が揃ったという。

 その後、ネタとして番組の中で使い出したら、またたく間に全国に広がった。なにせあの番組の視聴率は全盛期には40%~50%もあった。国民への影響力は半端なかった。

 そもそもじゃんけんとは心理的な戦いという側面もあるそうだ。

 戦いに挑もうとする時、人は無意識に拳を握る。つまり、グーは機能的に一番出やすい手だ。

 そして人間の心理として、同じものを2回続けて出すのは多少違和感があるので、「最初はグー」の次はパーとチョキの勝負になる確率が高い。だから、チョキを出せば勝算は高くなる。

 この心理を知っている人はじゃんけんに比較的強い人だ。 

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 さて、ここからが本題。「最初はグー」があるのなら、最後だってあるはずだ。最後はなんだろう。

 「日本いのちの花協会」というところが朝刊に全面広告を出した。

 おばあちゃんの顔がアップで載っていた。広告のコピーは「さいごはグー。」だった。

 こんな文面があった。

 「人生を最期まで豊かに全うできるように。老いても病んでいても、人間としての尊厳が守られるように。『さいごはグー。』、ひとりでも多くの方に、そうあっていただけますように…。」

 何が原因で亡くなったかではなく、どういう気持ちで、どういう人生を生き抜いたかが大事なのだと思う。人生いろんなことがあったけど、最後はグー、すなわち、GOODで終わりたい。日本人なら「グッド」と言いたいところだが、発音は「グー」だ。

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 山本文男さんは津波研究家である。「津波の時はてんでに逃げろ」という意味の言葉「津波てんでんこ」を広めた人だ。

 岩手県生まれの山本さん、9歳の時、「昭和三陸地震」(昭和8年)で大津波を経験した。必死で高台に逃れ、九死に一生を得た。その経験もあって津波の研究家になり、多くの本も書いた。

 東日本大震災の津波の時は病院の4階に入院していて、津波の直撃を受け、カーテンにしがみついて助かった。衣服は流されたらしく、救出されたときは全裸だった。

 「津波てんでんこ」を広めた本人なのに、あの時は逃げなかった。
 「なぜ逃げなかったんですか?」というマスコミの質問に、こう答えた。「だって津波を見たいじゃないですか」。さすが津波研究家。

 その後、山本さんは退院し、2011年12月に亡くなった。87歳だった。「最後はグー」と言っていい人じゃないだろうか。
 (2012年1月23日号の社説より)

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