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転載・過去・未来 2849号(2020/08/24)
その169 エア・ジョーダンの裏話~魅力は一つに絞ったほうが伝わる

魂の編集長 水谷謹人
 マーケティングの話を聴いた。

 かつてアメリカのプロバスケットボールの世界でスーパースターだったマイケル・ジョーダンの話である。

 ナイキの営業担当者はこんなことを考えていた。「あのマイケルがうちのシューズを履いてプレーをしたら世界中の若者が真似したくなるはずだ」

 早速、マイケル・ジョーダンにコンタクトを取った。「今度から試合に出るとき、うちのシューズを履いてくれないか?」

 マイケルは「チームの決まりでそれは出来ない」と断った。

 当時、彼が所属していた「シカゴ・ブルズ」は、チームとして別のスポーツシューズメーカーと専属契約を結んでいた。プレーするときは全員そのシューズを履かなければならなかった。

 それを聞いて担当者はがっかりした。しかし、マイケルの次の一言に飛び上がって喜んだ。

 「この契約に違反したら5000ドル(約50万円)の違約金を払わなければならないんだ」

 ナイキが勝利を掴んだ瞬間だった。「1試合で5000ドルだって? 10試合で5万ドル、20試合で10万ドルか。その違約金はうちが払うよ、マイケル」

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 その違約金のおかげで、ナイキはこんなコマーシャルまで流すことが出来た。

 「マイケル・ジョーダンは違約金を払ってまでナイキのシューズを履いている!」

 さらにナイキはマイケルに履いてもらうシューズのネーミングまで変えた。「エア・ジョーダン」と。

 たちまち「エア・ジョーダン」はバスケットボールファンだけでなく、世界中の若者たちが欲しがるスポーツシューズになった。

 よく考えると、ナイキにとって1試合5000ドルの違約金は一回の広告宣伝費より安かった。

 シカゴ・ブルズと専属契約していたシューズメーカーはナイキから莫大な違約金を手にしたが、ナイキはその100倍以上もの売上を上げた。そして「ナイキ」は揺るぎないブランドになった。

 これがマーケティングだ。誰も損はしていない。そのシューズメーカーより、ナイキのほうがちょっと賢かっただけだ。

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 上手なマーケティングのコツは、消費者に気づいてもらうこと、覚えてもらうこと、そのために目立たせる。そして強調したいことを如何に一つに絞るか。これが重要なのだそうだ。

 一つの商品を売ろうとするとき、複数ある特徴を羅列してしまうとかえって消費者の心には残らない。一つに絞るために他のたくさんの情報を捨てることは忍び難いが、効果は絶大だ。

 例えば、酸っぱ過ぎてとてもそのままでは食べられないレモンは、ビタミンB群や食物繊維、クエン酸など複数の栄養素がある中、ビタミンC一つで勝負した。

 その結果、レモンはビタミンCの代名詞となり、料理に欠かせない食材となった。

 PRしたいメッセージも一つに絞って10秒以内で語れるものがいいそうだ。あの五つ星のザ・リッツ・カールトンホテルのメッセージはこうである。

 「私たちは淑女・紳士にお仕えする淑女・紳士である」

 アメリカの地方紙の一つだったウォール・ストリート・ジャーナルは次の一言で全国紙になった。

 「至るところで成功する男たちはウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいる」

 一つに絞ってみよう、自己PRも一言で。

(2012年6月18日号社説より)

 
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