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転載・過去・未来 2853号(2020/09/28)
その172 最高のチームの作り方~受験は個人戦ではなく団体戦

㈱アビリティトレーニング代表取締役 木下晴弘
 私はかつて超難関といわれる学校に合格者をバンバン送り出している進学塾の講師をしていました。特に灘校に関しては合格者数全国1位を誇っていました。

 私たち講師陣にはある信念がありました。それは「受験は個人戦ではなく団体戦である」ということです。これから私たちが体験した非常に不思議な出来事をお伝えします。
 
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 分かりやすくするため仮に神戸にある教室を「A教室」、大阪にある教室を「B教室」、京都にある教室を「C教室」としてお話しします。この三つの教室の最上位クラスに灘校を目指す受験者が10名ずついたと仮定します。つまり、三教室合わせて30名の受験者です。そしてその30人の学力はほぼ同じです。また同じ講師が三教室を回り、同じテキストを使って教えています。

 ある年、この30名の中から15名の合格者が出たとします。この15名の合格者が、それぞれ三つのクラスに5名ずつ分布していたら何も不思議ではありません。だって同じ学力、同じテキスト、同じ講師から学んでいるわけですから。

 ところがそうならなかった。合格者15名のうちの8名がA教室の生徒、B教室は平均的な5名、C教室は惨敗の2名でした。

 このうちB教室とC教室の違いは何だったか。B教室の生徒は仲良しグループでした。それに対してC教室にはいじめがありました。いじめのあるクラスでは生徒は勉強に集中できません。

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 次に私たちが考えたのは、圧倒的な合格者数を出したA教室は平均的なB教室と何が違ったのか、ということです。

 そこで過去にさかのぼって圧倒的な合格者数を出したクラスの卒業生に「どんな勉強をしたのか」「どんな教室の雰囲気だったのか」を聞いていきました。

 その結果、私たちはとんでもないことを見つけました。なんとB教室が仲良しの「グループ」だったのに対して、A教室は見事な「チーム」だったのです。「グループ」と「チーム」は全然違います。何が違うか?

 たとえば、B教室の生徒は仲はいいのですが、お互いの勉強に干渉しません。誰かが漫画を持ってきても注意しません。塾のない日、B教室の生徒はそれぞれ自分の家で勉強します。

 一方、A教室の生徒は、たとえば数学が得意な子は数学が苦手な子に数学を教えることで友だちの成績を上げようとします。

 漫画を持ってきた子がいたら、誰かが「お前、何しとるんや。俺らはあの学校に全員で受かろうって約束したんと違うんか。一緒に合格しようぜ。合格したらその漫画を回し読みしようぜ」と言うんです。すると周りの子も「そうや。漫画しまってこっち来い」と言うんです。塾のない日は誰かの家にみんなで集まって勉強します。

 A教室の生徒の合格体験記を読むとこんな言葉があります。「僕の合格は、このクラスの友だちがいなければ決して成し遂げられなかったと思う」

 このように、お互いにサポートし合って全員で目標達成するという文化ができた時、ものすごい力になっていくんです。

 このことが分かった私たち講師陣は、自然と自分たちがやらなければならないことがはっきり分かりました。それは、いかにA教室のような「チーム」を作り上げるか、です。

 これは学習塾での私の体験ですが、学校の学級づくりや会社経営にも応用できると思っています。

(2017年7月31日号より)



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