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転載・過去・未来 2860号(2020/11/16)
その178 インターネットを開放した男~「地球存亡の危機じゃないか!」

彗星探索家 木内 鶴彦
 1992年にとんでもない彗星を発見しました。

 それが「スイフト・タットル彗星」です。アメリカのスイフト氏とタットル氏という二人の天文学者が1862年に発見した彗星です。でもその後、130年以上も行方が分かりませんでした。私がそれを見つけたんです。

 ところが、その彗星の軌道を計算すると、「2126年に地球と衝突する可能性が高い」ということが分かりました。

 人類史上初めて彗星が太陽系の惑星に衝突する場面を観測できたことがあります。1994年7月、シューメーカー・レビー第9彗星による木星への衝突です。

 私は観測隊を編成してオーストラリアへ飛び、直径45センチの巨大な天体望遠鏡で観測しました。

 それは予想を上回る光景でした。テレビでご覧になった人もいると思います。

 彗星は21個に分裂しながら次々と木星に衝突しました。地球と同じくらいの大きさのキノコ雲が観測されました。

 私たちの予想をはるかに超えるその結果に、「こんなことが2126年に地球で起こったら大変なことになる」と青ざめました。

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 その年の12月、64か国の専門家が集まって第1回「将来世代フォーラム」が開催されました。

 そこで私は「宇宙ステーションを造って、そこから核ミサイルで彗星を破壊する」というアイデアを提案しました。反対する国はありませんでした。

 今、16か国で宇宙ステーションの建設が始まっていますが、それはこの会議での提案から始まったものでした。

 その後、地球にぶつかるかもしれない星「ニア・アース・オブジェクト」を探すためのネットワークにアメリカが予算を付けました。

 このネットワーク成立のために、私がアメリカに開放を求めたのが「インターネット」です。

 私は以前航空自衛隊にいたので、インターネットの存在を知っていました。アメリカの国防総省(ペンタゴン)が開発した軍事用の通信システムでした。

 「冷戦はもう終わったんだから、今度はこれを地球を守るために開放してくれ」と言いました。

 するとアメリカの代表が、「冗談じゃない。アメリカの軍事機密にかかわる」と言いました。

 「地球存亡の危機なのに何を言ってるんだ。世界の警察が聞いて呆れる」と、私はだんだん喧嘩腰になっていきました。

 次の日、アメリカの代表が誰かと話をしたらしく、「開放するとしてアメリカにも何かの利益がないと…」と言い始めました。

 当時、コンピュータ業界で圧倒的に力を持っていたのはMac(マック)でした。でも、私はどちらかというとマイクロソフト社のほうが好きでした。

 マイクロソフト社のMS-DOSが今ほど売れていない時代でした。それで、「マイクロソフト社にやらせては?」と話したんです。

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 翌年5月、アメリカはインターネットを開放しました。そして同年11月に発売されたのがマイクロソフト社の「ウィンドウズ95」でした。

 今ではすっかり定着したインターネットですが、その陰にはあのときの国際会議の熾烈なやりとりがあったんです。

 当時の議事録の中に全部記録されています。NHKにも会議の映像が残っています。そこでは若い頃の私が頑張ってしゃべっています(笑)。

(2009年1月1日号より)
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