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無料公開!!【転載・過去・未来】その115

昨年からストっプしているスタッフブログ。

今週号から、ひそかにファンの多いコーナー「転載・過去・未来」の内容を
この場をかりて、無料公開します!!
どうぞ、お楽しみに~☆
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愛はエイズを超えていく~「彼だけは、失いたくない」~  弁護士 徳田靖之



 私が幾度となく薬害エイズ訴訟原告団への参加を勧めていた若者がいました。しかし、彼は頑として私の話に耳を傾けてくれませんでした。

 ところが、ある日彼が突然私の事務所にやってきて、原告団参加を表明してくれたのです。

 その時、彼はこんな話を打ち明けてくれました。

 「中学の時から、僕は血友病であることを意識しながら生きてきました。それほど長くは生きられないと思っていたし、結婚もできないと思っていました。ですから中学の頃から、『感じがいいな』と思う女性には絶対に近づかないようにしていました…」と。

 そして、ある時彼は、当時の厚生省が承認した非加熱血液製剤を通してHIVに感染したことを告げられます。

 「でも、全然ショックじゃありませんでした。『思っていたより、また人生が少し短くなった』くらいの心境でした」と彼は話してくれました。

 就職して何年目かのこと。彼はある店の女性店員から、「今度ドライブに行きませんか」と誘われました。

 「いいですね、行きましょう」と答えた時、彼は初めて気付きました。「僕は彼女を好きになっていた」と。

 何日も苦しんだ後、彼は覚悟を決めました。「感染の事実を告げ、交際を断るしかない」と。

 「先生、こんなに悔しい気持ちになったのは初めてです。何で好きな彼女に感染の話をして、『あきらめてくれ』と言わなきゃいけないんですか。だから僕は原告団に入ります。先生、絶対にこの裁判に勝ってください」と。


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 私は、彼に一通の手紙を見せました。3年前に、ある感染者の奥さんが東京地方裁判所の裁判長宛てに書いた手紙です。そのご夫婦から了解を得ていますのでご紹介します。

 「…主人と正式に交際を始めたのは昭和63年10月のことでした。2回目のデートの帰りに、主人は急にデパートに立ち寄って、私に記念だと言ってスカーフをプレゼントしてくれました。…彼はこれが最後のデートのような顔をしていました。

 次の年、彼から病気のことを告白されました。ウイルス性の肝炎を患(わずら)っていること、血友病であること、エイズに感染していること、一つひとつゆっくりと話してくれました。全部言い終わると、彼は一気に泣き崩れました。

 しかし、私は彼の告白に意外にも驚きませんでした。私は泣いている彼を抱きしめました。私はその時、すでに彼のことを愛していたのです。

 私は彼を何とかエイズの発病から守ってあげたい、栄養面でも気を付けてあげたいと思いました。そして、その日以来、デートを重ね、結婚しました。

 残念だったのは彼の病気のことを私の家族に話せなかったので式を挙げられず、黙って家を出て彼の元へ嫁いだことです。友だちも多く失いましたが、彼を失いたくない。彼と共に生きる人生を私は選んだのです」


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 彼はこの手紙を読んだ後、「先生は僕に『あきらめなくていいんだよ』と言いたいんですね」と言って帰っていきました。

 そして、その1年後の夏に、ふたたび彼は私のところにやってきて言いました。

 「先生、僕、結婚することになりました。ぜひ式に出席してくれませんか」と。


(1998年2月9日、16日号より)