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つまずきやすい日本語

弊社は新聞を発行する前に、誤字脱字等がないかをチェックする「読み合わせ」を行っています。
ある日の読み合わせの時のこと。社説に「揺らがない」という言葉を見つけました。
私はその言葉に引っかかりました。「『揺るがない』じゃなかったっけ?」と。
ほかの編集部の面々は何も気付いていない様子。どうやら自分だけが疑問に思っていたようでした。

その後、「揺らがない 揺るがない」とネットで検索しました。
NHK放送文化研究所のサイトには「肯定形でよく使われているのは『揺らぐ』です。ここからすると、その否定形は『揺らがない』であるということになります。しかし実際には両方使われていて、むしろ『揺るがない』のほうが多いくらいなのです」とありました。
「揺らがない」と「揺るがない」、果たしてどちらが正しいのか? どちらも間違いではないのか? 言葉を職業にしている私はもっと知りたくなり、『日本語をつかまえろ!』(毎日新聞出版)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新書)の近著がある国語辞典編纂者の飯間浩明さんにお話を伺いました。

―「揺らがない」と「揺るがない」、どちらが正しいですか?
「一般的にはどちらも使います。言語学では『異形態の関係』といって、ほかにも『足りない・足らない』『つなげる・つなぐ』などがあります」
―では、紙面でどちらを使っても問題ない?
「どちらを使っても間違いではありませんが、『揺らがない』は口語的で、『揺るがない』は文語的ですね」
ということなので、今後も「揺らがない・揺るがない」はどちらも紙面で使用します。

飯間さんは著書『つまずきやすい日本語』の中で、人の頭にはそれぞれ辞書があるといいます。その「脳内辞書」は人それぞれ違うと指摘した上で、「自分にとって違和感があることばでも、ほかの多くの人が使い、理屈にもかなったことならば、寛容の精神で見守ることも必要です」と述べています。
新聞作りでは誤字脱字があるとまずいので、なかなか「寛容の精神で見守る」とはいきません。ですが、日常生活においてはこのような態度で言葉に接したいものです。


                              編集部・鬼塚恵介