社説 2550号(2014/04/21)
内なるエネルギーはバランスよく
魂の編集長 水谷謹人
世界一のコーチと言われているアンソニー・ロビンズ初来日セミナーに行ってきた。何をもって「世界一」と言わせしめているのかというと、例えば、彼の指導を受けたクライアントには歴代のアメリカ大統領、故ロナルド・レーガンやビル・クリントンがいた。テニス界のトッププレーヤー、アンドレ・アガシやハリウッドの有名な俳優も少なくない。
彼のセミナーには世界各国から参加者が集い、3000人の席はいつも満席となる。ちなみに参加費は約60万円ほど。
今回は千葉の幕張メッセに約6000人が集った。98万円のVIP席が発売と同時に完売した。一番安いY席でさえ9万8千円というお値段。
なぜそんな高額な料金を払ってでも参加する人が絶えないのかと言うと、彼の指導が、一人ひとりの潜在意識に眠っている無限の可能性の引き出し方を教えてくれるからだろう。だから政治家もプロスポーツ選手も実業家も、あるいは普通のサラリーマンやOLも、それぞれに夢を叶えていく。その体験や噂が口コミで世界中に広がって、毎回、高値の席から売り切れるセミナーになった。
たった一度しかない人生、自分も知らない自分の可能性に賭けてみようという勢いが、そこにある。
◇ ◇
カトリックのシスター(修道女)の話を聞いた。40代の頃、ある人から「シスター、ベビーができたのかい?」とジョークを言われた。ちょっと太めのシスターだった。男女関係が御法度の世界で生きるシスターは、激怒した。
その時、別の人がこう言った。「シスター、あなたは怒るべきではない。それより自分のお腹を見てみなさい」
彼女は自分の体に起きている現実に初めて気付いた。それから彼女は理想の体型をつくろうと鍛え始めた。それが自分本来の姿だと信じて。
79歳の今日まで、全米で開催されるアイアンマン大会に出場しまくった。その数、300回を超えた。水泳3・8㌔、自転車180・2㌔、最後は42・2㌔のフルマラソンを走る鉄人レースである。
かつて彼女は、70歳の誕生日をハワイで迎えたいと思ってハワイに行った。そこで、翌日アイアンマン大会が開催されることを知った。70歳の誕生日の記念にと思い、すぐ申し込んだ。
競技当日、自転車を漕いでいる時に突風が吹いて転倒し、大怪我をして病院に運ばれた。その事故を受けて、大会事務局は次回から65歳以上の参加を制限した。
自分のせいで65歳以上の人が参加できなくなったことを知った彼女は胸を痛め、翌年、71歳の誕生日に再び挑戦すべくハワイに飛んだ。大会事務局は彼女の参加を認めなかった。彼女は言った。
「それなら私はこの大会に出場するのではなく、自分で勝手にやります」
今度は3・8㌔を泳ぎ、自転車を180・2㌔漕ぎ、42・2㌔を完走した。
アンソニーは言う、「これが人生だよ。これが人間の無限の可能性だよ」と。
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人間は、いろんなエネルギーの集合体だといわれる。また美味しいものを食べたい。ずっと健康でありたい。もっと利益を出したい。何か社会貢献をしたい。もっと学びたい。子どもたちの喜ぶ顔が見たい。そんな内なるエネルギーの発露が歴史を発展させたことは間違いないだろう。大切なのはその内なるエネルギーがバランスよく発散していることだと思う。
アンソニー・ロビンズのセミナーは確かにすごかった。西洋型の成功哲学がそこにあった。彼に感化された多くの若者が人生の成功を夢見て、歩み出したに違いない。
そんなことを考えながら帰路に就いたら、無性に古事記が読みたくなり、神社に行きたくなった。日本人のDNAが、内なるエネルギーのバランスを取り始めたのかもしれない。