親学のススメ 2550号(2014/04/21)
その4 学力の格差はつながりの格差だった
明星大学教育学部教授/一般財団法人親学推進協会会長 髙橋史朗
学力の格差は、これまでは都会と田舎の格差だとか、年収の格差、経済格差と言われてきました。しかし、大阪大学の調査で、「つながりの格差」だとわかってきました。つながりには三つの指標があります。「家族のつながり」「地域のつながり」「学校とのつながり」、この三つのつながりが深ければ深いほど学力が高い。秋田県はこの三つがすべて優れています。
明治31年に、当時の高等小学校で親に配っていたものに『家庭心得』というものがあります。
ここには保護者への注意としてこう書いてあります。
「ことわざにも教育の道は、家庭の教えで芽を出し、学校の教えで花が咲き、世間の教えで実が成る、と申す程に…」
これが日本の教育の伝統です。家庭と学校と地域で子どもを育てることが日本の教育の伝統なんです。
今、家庭の教えが衰退しているから芽が出ていません。芽が出ていない子を、学校の先生が一生懸命教育しているんです。芽が出ていないものは花を咲かせようがありません。芽が出るようにまずは親を再生しなければ、日本の教育は再生できません。
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親学には二つの意味があります。「親になるための学び」と「親としての学び」です。
子どもを産めば親になるんじゃないんです。親になる前に、親としての責任・役割は何なのかを学ぶ必要があるんです。
そして、「学習」という言葉の意味が大事です。
「学」は「まなぶ」です。「まなぶ」は「まねる」から来ています。誰のまねをするかというと、親のまねです。「習う」はどういう意味かというと、繰り返し、繰り返し、慣れるという意味です。
つまり、親のまねを繰り返して、慣れることが「学習」なんです。「学習」とは本来、親の役割、家庭教育の意味を表しているんです。
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親学とは「育自学」です。
普通の育児は児童の「児」で、子どもをどう育てるかという意味ですが、まず、自らをどう育てるか、つまり自分が元気になる、自分が幸せになる、自分が夢を持つことが大事だと強調しています。
子どもに「夢を持て」と言うならば、親や先生たちが、夢に向かって挑戦している必要があると思うんです。
89歳の茶道裏千家の千玄室さんと対談した時、「私は毎朝、鏡に笑顔を映して、その笑顔の自分にあいさつをしています」と言われていました。
「おはようございます」と自分にあいさつする。これがまさしく育自です。
私は500世帯ぐらいのマンションに住んでおりますが、子どもたちに必ず「おはようございます」と言います。初めのうちは7、8割、返事がありませんでした。大抵、親も返事をしません。
でも、「おはようございます」と言い続けると、明らかに半年ぐらいで変わってきます。諦めちゃいけないんです。
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親学の一番大事なポイントは、親自らが成長すること、これを「主体変容」と言っております。
まず自分が変わることです。
子どもを変えようとしても子どもは変わりません。でも、親が変われば子どもは変わります。大人が変われば子どもは変わるんです。
自分以外の誰かに責任を転嫁するのではなくて、自分が変わることによって子どもは変わるということです。ここから始めることが大事です。
(宮崎総合学院が主催した「親学」講演会より)