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社説 2535号(2013/12/16)
人生の中に「人生の言葉」を

魂の編集長 水谷謹人
 気が付くと50の声を聞いてから丸4年の歳月を過ごしていた。

 「50」なんて、意気揚々とみやざき中央新聞を引き継いだ30代のときには、想像だにしなかった領域だ。その未知なる領域に今しっかり両足を踏み込んでいるとは、これを恐ろしいと言わないでどう表現したらいいのだろうか。

 この年齢になってから見える眼前の風景は、あまりにもあわただしく、ほっとする暇もないほどだが、それでいて鮮やかな彩りをもって日々の営みを楽しませてくれている。

 なるほど、年を取るということは、人生の「下り坂」を降りていくことではなく、むしろ徐々に幸福度を増しながら上昇していくことだったのか。

 子どもの頃は誕生日を迎え、年が一つ増えることに喜びを感じていた。年が増えることは、成長することそのものだったからだ。

 しかし、大人になって、年を取ることと、成長することは、イコールではないことに気付くようになった。ある時期を境に、「人間の成長」とは年齢を重ねることとは違う、何か別の形でもたらされるものではないかということである。

 そして、そのことが本当の意味での成長、すなわち人間としての精神の成長であり、それは肉体の成長と違って限界がなく、年を取り続ける限り、どこまでも成長が可能であること、さらにその成長が幸福感と大きく関係していることを感じるのである。

 そう、幸せというものは、人間として成長した分だけ大きくなっていくものだということを、この年齢になってようやく知った。

 さて、精神の成長には、人や本を介して出会う「言葉」が欠かせない。

 『営業の魔法』の著者・中村信仁さんから「心が技術を超えない限り、技術は生かされない」という言葉を聞いた。

 どんなに高度な技術でも、それが誰かを幸せにするという方向に心が向いていない限り、無意味なものだということだ。 こんな心を揺るがす「人生の言葉」に今年もたくさん出会ってきた。

 2年前、『超訳ニーチェの言葉』が売り上げ100万部を突破して話題になった。「哲学書は売れない」という業界の常識を破ったからだ。

 「なぜこの本が売れたと思いますか?」というマスコミの質問に、著者の白取春彦さんはこう答えていた。

 「若い人が『人生の言葉』を欲しがっていたんでしょうね。『人生の言葉』とは、利害や損得に関係ない言葉です。ずっとお金や出世、効率などに縛られてきましたからね。気がついたら『人生の言葉』が生活の中に無くなっていたんですよ」

 「何のために仕事をしているんですか?」と問い掛けられたとき、もちろん「生活のため」なのだが、もっとかっこいい答えを若者は欲しがっている。自分の人生と向き合える言葉を。自分を勇気付け、元気に仕事に打ち込めるようになれる言葉を。

 毎日フェイスブックに「人生の言葉」を筆文字で書いて配信している素人書家たちが今大人気である。若者がそこに殺到している。

 たとえば、小玉宏さんの書、「世の中ってね、できないことよりもできることの方がずっとずっと多いんだよ」

 谷口浩子さんの書、「人はどんなに回り道をしてもあとから振り返ると まっすぐなそれは一本道」

 そして、下川浩二さんの書、「逆境に強い人がいるんじゃなくて、逆境が人を強くするんです」

 「人生の言葉」と出会ったとき、魂が揺さぶられ、精神が高揚する。そのとき、人は一つ成長するのではないか。真の成長とは、心が上向きに変化することなのではないか。

 人間としての成長、その終わりのない領域に身を置く喜びをかみしめながら、その心を新たな行動、実践へと向かわせよう。

 2013年のすべてに感謝!
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