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特集 詩が開いた心の扉④(終)「こんなボクなのに・・・ なぜそんなにやさしい眼で・・・」
≪PDF版≫

≪テキスト版≫
私の知り合いに、小学生の娘さんがタバコを吸ったということで学校から呼び出されたお父さんがいます。その時、彼は娘に何と言ったと思いますか?
「〇〇ちゃん、偉いね。タバコを吸ってみたかったんだね。その好奇心はすごいと思う。お父さんは嬉しい。だけどタバコは体に悪いんだ。お父さんは〇〇ちゃんのことが大好きで、とても大切だから、お願いだから体に悪いことはしないでね」と言ったそうです。
悪いことをした時、こういう伝え方をしてもらえたら、きっとこの先、この子は道を踏み外さないと思うんです。
どんなことをしても無条件に受け止めて寄り添うことです。子どもが何も喋らなかったら喋らせようと思わないでいい。黙って横に座って30分なり1時間の時間を過ごすだけでもいい。
私たちが刑務所でやったことはそういうことでした。
「死にたい」と言った子に、「死ぬとかそういう後ろ向きなことを言ってどうするんだ」とか、「親を殺したい」と言った子に、「親を殺したいとは何事だ!」とか、そういうことを言わない。ただただ「しんどい目にあったんだね。つらかったね」と言うだけです。
そしたらワーッと泣き出す子もいます。そこから立ち直りも始まるし、改心も始まります。
自分のことを受け止めてもらったという実感があれば、そこから人間らしい心が育って、社会復帰に向かっていきます。
もちろん私がいくら絵本や詩の授業をやったからって、彼らが社会に出て器用に世の中でやっていけるようになるかというと、簡単じゃないと思います。でも、皆さんがどこかでそういう人に出会ったとしたら、どうか受け止めてあげて欲しいんです。
私が奈良少年刑務所の授業で知ったのは、人は朗読をしたり、自分を語ったり、詩を書いたり、何かを表現した時に、それを受け止めてもらうことで、癒やされるということです。癒やされて心の扉が開いたら、どんなひどい罪を犯した人でも、その心の中からやさしさがあふれ出てくるということでした。
私は、刑務所の作業所で一番困った子を教育して戻してやることで、作業所全体の雰囲気がよくなったケースをたくさん見てきました。社会も一緒だと思います。
汚らしいものをつまみ出して向こう側に追いやれば、ここに綺麗な世界が生まれるわけではないんです。かえってつまみ出された人たちを追い詰めて犯罪に向かわせてしまいかねません。一番困っている人を助けることがこの社会の安全を守ることに繋がると思います。
最後に私の教室の子がお母さんへの思いを書いた詩を紹介して私の話を終わります。
こんなボク
こんな未来を ボクは望んだだろうか
こんな未来を ボクは想像もできなかった
こんなボクの どこを愛せるの?
なぜ そんなにやさしい眼で見れるの?
「だいじょうぶ まだやり直せるよ」って言えるの?
こんなボクなのに……
こんなボクなのに ありがとう お母さん
みんながこんな気持ちでいれば、きっとこの社会から悲しい子どもたちがいなくなると思います。ありがとうございました。
(傾聴ボランティア「なら」5周年記念講演にて/取材・清水大伸関西特派員、編集・水谷謹人~終わり)

≪テキスト版≫
作家
寮 美千子
寮 美千子
私の知り合いに、小学生の娘さんがタバコを吸ったということで学校から呼び出されたお父さんがいます。その時、彼は娘に何と言ったと思いますか?
「〇〇ちゃん、偉いね。タバコを吸ってみたかったんだね。その好奇心はすごいと思う。お父さんは嬉しい。だけどタバコは体に悪いんだ。お父さんは〇〇ちゃんのことが大好きで、とても大切だから、お願いだから体に悪いことはしないでね」と言ったそうです。
悪いことをした時、こういう伝え方をしてもらえたら、きっとこの先、この子は道を踏み外さないと思うんです。
どんなことをしても無条件に受け止めて寄り添うことです。子どもが何も喋らなかったら喋らせようと思わないでいい。黙って横に座って30分なり1時間の時間を過ごすだけでもいい。
私たちが刑務所でやったことはそういうことでした。
「死にたい」と言った子に、「死ぬとかそういう後ろ向きなことを言ってどうするんだ」とか、「親を殺したい」と言った子に、「親を殺したいとは何事だ!」とか、そういうことを言わない。ただただ「しんどい目にあったんだね。つらかったね」と言うだけです。
そしたらワーッと泣き出す子もいます。そこから立ち直りも始まるし、改心も始まります。
自分のことを受け止めてもらったという実感があれば、そこから人間らしい心が育って、社会復帰に向かっていきます。
もちろん私がいくら絵本や詩の授業をやったからって、彼らが社会に出て器用に世の中でやっていけるようになるかというと、簡単じゃないと思います。でも、皆さんがどこかでそういう人に出会ったとしたら、どうか受け止めてあげて欲しいんです。
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私が奈良少年刑務所の授業で知ったのは、人は朗読をしたり、自分を語ったり、詩を書いたり、何かを表現した時に、それを受け止めてもらうことで、癒やされるということです。癒やされて心の扉が開いたら、どんなひどい罪を犯した人でも、その心の中からやさしさがあふれ出てくるということでした。
私は、刑務所の作業所で一番困った子を教育して戻してやることで、作業所全体の雰囲気がよくなったケースをたくさん見てきました。社会も一緒だと思います。
汚らしいものをつまみ出して向こう側に追いやれば、ここに綺麗な世界が生まれるわけではないんです。かえってつまみ出された人たちを追い詰めて犯罪に向かわせてしまいかねません。一番困っている人を助けることがこの社会の安全を守ることに繋がると思います。
最後に私の教室の子がお母さんへの思いを書いた詩を紹介して私の話を終わります。
こんなボク
こんな未来を ボクは望んだだろうか
こんな未来を ボクは想像もできなかった
こんなボクの どこを愛せるの?
なぜ そんなにやさしい眼で見れるの?
「だいじょうぶ まだやり直せるよ」って言えるの?
こんなボクなのに……
こんなボクなのに ありがとう お母さん
みんながこんな気持ちでいれば、きっとこの社会から悲しい子どもたちがいなくなると思います。ありがとうございました。
(傾聴ボランティア「なら」5周年記念講演にて/取材・清水大伸関西特派員、編集・水谷謹人~終わり)










