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取材ノート 2674号(2016/12/05)
続・マニラの太陽が見たくて

中部特派員 山本孝弘
 「外国人技能実習制度」を活用し、フィリピン人を1人採用するために、私は再びマニラを訪れました。

 こちらの提示した条件に合う青年たち7名が会場に来ており、その中から1人だけ採用しなければなりません。集まった全員が「日本で働きたい」と切に願っていました。

 他人の人生を大きく左右する重圧から逃げ出したくなりましたが、逡巡を重ねた末に、1歳の娘を持つ23歳の青年を採用することに決めました。

 面接が終わった後、現地法人の社長が彼を部屋に呼んで採用の旨を告げると、彼は英語で「弟たちと幼い娘のために日本で頑張ります」と言いました。彼の目は眩しいほどに輝いていました。

 その後、入国管理局に出す書類等を整理した私が部屋を出ると、採用された彼が私を待っていました。

 「よろしくお願いします」と、今度は拙い日本語を使いながら頭を下げられました。見ると彼は泣いていました。こちらも胸が熱くなりましたが、ぐっと堪え平静を装いました。

 ふと私の隣を見ると、通訳のダイアンがもらい泣きをしていました。後で聞くと、嬉しくてつい泣いてしまったのが半分、残りの半分は不採用になった青年たちのことが頭に浮かんだとのことでした。

◎          ◎


 今回の出張で、私はうちの子が履けなくなった靴を3足持っていきました。

 ホテルのそばにもたくさんのストリートチルドレンがいます。翌朝の集合時間前に、私は裸足の子どもを探して歩きました。

 10分も歩かないうちにすぐに見つかりました。2人の男の子です。靴を渡すと驚くほどぴったりでした。

 すると彼らの両親と思われる夫婦が3歳くらいの男の子を連れて私のところに来ました。この子は服すら着ていませんでした。残りの1足がまたこの子にぴったりでした。

 「あなたの履いている靴を私にください」そう話すお父さんの足元を見ると、彼も裸足でした。

 その日の昼食は、タガイタイという高原都市まで足を延ばし、見晴らしの良いレストランでとりました。外国人はおらず、フィリピン人の富裕層の家族が楽しそうに食事をしていました。

◎          ◎


 今、フィリピンは雨季から乾季に変わろうとしている季節です。太陽が顔を出したり、雨が降ったりしていました。そんな空模様のように、フィリピン国民の生活にも大きな差があります。

 お皿に乗ったたくさんの料理を残して隣のテーブルの家族は帰っていきました。

 幸せそうな彼らを見送りながら、私は今回採用を決めた青年と、朝に靴を渡した子どもたちは今頃何をしているだろうかと考えていました。
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