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転載・過去・未来 2684号(2017/02/27)
その16 「サンガイ・ジウネ・コラギ」~こんなにも人のために尽くせるのだ~

都城市・攝護寺住職 佐々木鴻昭
 結核撲滅運動のためにネパールで18年間ボランティア活動を行った岩村昇先生のお話です。

 当時のネパールは医療制度が整っておらず、岩村先生の診療所には、もうどうにもならないような患者ばかりが来ていました。

 そんな現状に先生は「ここで待っているだけではいけない。自分で探して治療しなければ」と思い、村から村へ患者を探して歩きました。

 するとある村で、結核にかかっているおばあさんを見つけました。

 先生は「このままでは助からないので、なんとか自分の診療所に連れていって治療したい」と思いました。しかし診療所までは歩いて3日かかります。しかし先生にはおばあさんをおぶって連れていく体力がありません。

 「どうか若者をお遣わしください」と先生は祈りました。

 その祈りが聞き届けられたのか、1人の青年が通りかかり、「ちょうどその町まで塩を買いに行くところです。僕が連れていきます」と言いました。

 そして青年は3日間おばあさんをおぶって診療所まで連れていってくれました。

 先生は大変感動し、通常の賃金の3倍のお金を包んで渡そうとしました。しかし青年は、お金を受け取ろうとはしませんでした。

 青年は言いました。

 「僕は若く、人生も長い。おばあさんは歳を取っているからもうあまり長くない。そのおばあさんに僕の人生の3日間をプレゼントしただけだよ」

 その青年は「サンガイ・ジウネ・コラギ」と言いながら診療所を出ていきました。その言葉は「みんなで一緒に力を出し合って助け合って生きるために」という意味でした。

 岩村先生は、彼の後ろ姿を見つめながら言いました。

 「あの青年は裸足で歩き、しかも汗と泥で真っ黒になったシャツ一枚しか着ていない。その青年が全くお金に手を着けることなく、『みんなで一緒に力を出し合って助け合って生きるために』と言い残して出ていった。人間というものはこんなにも無償で人のために尽くすことができるのだ」と。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 こんなお話を聞いたことがあります。多くの人が試験を受けに来る、ある会社の社長のお話です。その人は必ず自ら面接をするのだそうです。

 ある年のこと、面接に来た学生に向かって社長は聞きました。「君はお母さんの足を洗ったことがあるかね?」

 その学生は正直に、「洗ったことはありません」と答えました。

 それからいろいろと質問した後に、社長は見どころがあると思ったのでしょう、「君、◯月◯日までにお母さんの足を洗ってからもう一度この会社に来てくれ」と言ったそうです。

 学生は実家に帰った時、お母さんの足を洗おうと思いました。ところがいざ母親の足を目の当たりにすると目頭が熱くなり、とうとうその足にしがみついて泣き出してしまったそうです。

 学生は約束の日に会社に行き、社長にそのことを話しました。

 「私の父は戦争で亡くなりました。母は女手一つで私を大学まで出してくれました。『こんなに足をヒビだらけにして、どんなにか苦労したんだろう』と思うと、母の苦労が身にしみるようによく分かりました。私は故郷で母と一緒に暮らしていきたいと思います。ありがとうございました」

 私たちは本当に多くの人の「おかげ」の中に生かされているのだと思います。そのことに対して、「おかげさまだなぁ。ありがとうございます」と言える世界を持つことが大切だと思うのです。

(1998年7月27日号より)


★このコーナーは過去26年のバックナンバーの中から選りすぐりの記事に加筆し、読み切りで転載しています。

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