世界一簡単!ストレスと上手につき合う方法 2615号(2015/09/07)
その5 「さざれ石」の意味を知り周りのすべてに感謝できるようになった
ストレスマネジメント研究家/クレーム対応アドバイザー 堀北祐司
僕が「歌の力」を実感したこんな出来事があります。
毎日のようにお客さまや上司から叱責され、その一言一句が、夜寝るときまで頭の中をグルグル巡って眠れなくなり、お笑い番組を見てもなかなか笑えなくなっていたときのことです。
「まいったな~」と思いながらチャンネルを替えたとき、聞こえてきたのがNHKの放送終了後に流れる国歌「君が代」でした。
この歌詞のもとになったのは、『古今和歌集』の歌でした。
「我が君は 千代に八千代に さざれ石の 巌(いわお)となりて苔(こけ)のむすまで」
細かく小さな「さざれ石」が岩のように大きくなり、苔が付くまでいつまでも平和で繁栄しますように、という意味です。
この「さざれ石」というものに俄然興味が湧き、実際にさざれ石が見られるという滋賀県の岡神社に行くことにしました。
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見ると、とても小さく細かい石でした。その「さざれ石」は、立派に苔が付き、僕の身長より少し低いくらいの高さになっていました。
宮司さんがこんな話をしてくださいました。
さざれ石は、最初は本当に小さい石ですが、長い長い、気が遠くなるほどの年月を重ね、石と石が合わさり大きくなっていくのです。
欧米では「ローリングストーン」といって、石は削られ小さくなっていくものと理解されています。でも日本の『君が代』では、「小さな石がだんだん大きくなり、体積が増える」と歌っているのです。これはたぶん日本独特の考え方です。
それはつまり、細かい石を一人ひとりと考え、それが合わさって巌となっていく。過去と現在と未来が一つになって初めて巌ができる。つまり、「みんな必要な人間」だと教えているのです。
それを聞いたとき、僕は初めて自分の存在を認めてもらえたように感じ、魂が震えるほど感動しました。
そして、周りにいるすべての人に感謝できるようになり、それからは、どんなにお客さんが怒って電話を掛けてきても、「怒ってくるお客さまも必要な人間なんだから感謝せなあかんな~」と思えるようになりました。
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五感を一度に活性化させてストレスを解消する、とっておきの方法があります。それは「さぁ海に行こう! 大作戦」です。
海に行くと、潮を含んだ海風が歓迎してくれます。そしてジリジリと照りつける太陽があり、はるか彼方に水平線が見え、波の音やカモメの鳴き声が聞こえます。
海水に触れると冷たくて気持ちがいい。舐めてみると塩味。まさに五感フル活動です。
僕が「心が折れた状態」から立ち直るきっかけになったのも、実は「海」でした。仲間が海に誘ってくれて、僕は先輩が運転する水上バイクの後部座席に乗せてもらい、沖に出たんです。
かなりのスピードで波を乗り越え走っていたとき、予想をはるかに上回る波がやってきて、先輩と僕は頭から海に叩きつけられました。真っ暗で何も見えず、何も聞こえなくなりました。
一瞬死を覚悟しましたが、ライフジャケットを着ていたおかげで海面に顔を出せました。
自然の怖さとともに、生きている実感を久しぶりに味わえた瞬間でした。
ショック療法のようでしたが、そこから僕自身の何かが変わり、立ち直りの道を進んでいくようになったんです。
(「ストレスマネジメント企画チーム」主催の講演会より/塩崎計吉特派員取材)