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ホスピタリティと日本人の流儀 2589号(2015/02/16)
その6 「もてなす」の語源は、「もってなす」 人生、何をもって、何をなすのか? 「感性の筋トレ」はそのためにある

人とホスピタリティ研究所所長 前リッツ・カールトン日本支社長 高野登
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 人が働く理由として、究極的には仕事を通して幸せを求めているからだと思います。

 ある一部上場企業では、3年以内に新入社員の22%が辞めていくそうです。会社のブランドも、給与的にも、決して悪くないはずですが、辞める人が後を断たない。

 その理由は簡単です。そこにいることが幸せではないからです。

 会社ができる社員に対しての最高のホスピタリティーは「生きがい」と「働きがい」を感じさせてあげることです。

 そうすると、少しぐらい満足できない状況があったとしても、「この会社には君が必要だ」と言われたら、もうちょっと頑張ろうというスイッチが入ります。この「もうちょっと」が「心の筋トレ」、「感性の筋トレ」に繋がります。

 入社したときは、5㌔の鉄アレイを持つことも精一杯だった人が、3年目には18㌔も持てたとします。

 そのとき、5㌔の鉄アレイを見て、「あの頃は5㌔が大変だと思っていたよなぁ」と思うわけです。

 心も、筋トレすることで接客のときにお客様の気持ちが分かるようになったり、お客様に近付けるようになります。だから、「心の筋トレ」は続けることが大切です。

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 東京オリンピック誘致のプレゼンテーションで、滝川クリステルさんが「おもてなし」という言葉を世界に向けて発信しました。

 これはリッツ・カールトンが勝手に導き出したことですが、「おもてなし」とは、すべての働き方、すべての生き方を決めている一つの概念です。

 この言葉は「もてなす」という言葉から来ています。「もてなす」とは、どうも聖徳太子の言葉らしいです。 

 「和をもって尊しとなす」ですよね。この「もってなす」が「もてなす」の語源みたいです。

 そもそも自分はこの仕事の中で「何をもって何をなすのか?」という概念は言葉で説明できません。自らの感性で感じ取るしかありません。「感性の筋トレ」が必要な理由はそこにあります。

 自分の仕事の「もってなす」原点をきちんと考えていくことが、自分自身が変わる出発点になります。

 リッツ・カールトンで毎日行う20分間のミーティングを、「ラインナップ」といいます。自分たちの働く意味、この会社の理念、この仲間で一緒に仕事をすることで生み出せる価値は何かを毎日ちょっとだけ考えるのです。

 毎日心を磨いていないと、心の柔らかさは失われていきます。すると、忍耐強さがなくなり、人のことが許せなくなっていきます。

 だから、毎日10分でもいいから、心磨きの時間を取るのです。これは1人でもできますが、チームで考えるともっと力強いです。

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 私が高校生の頃、昭和40年代の先生たちは面白かったです。

 たとえば、数学の時間なのに、途中で先生が、「信州の商人道の話をしてやる」と話し始めるわけです。

 「たとえどんな小さな結果しか見えなくても最大の努力を惜しまない。これが信州人魂だ」とか、「何があっても家族を飢えさせるな。絶対飯を食わせ続けろ。それが商人だ」とか言うんです。

 そのときの話は、その後アメリカで働く私の原点になりました。

 当時の私は三つの仕事を掛け持ちしていて、睡眠時間は3、4時間。そんな生活を半年ほどしていました。

 「頭で稼ぐ力がなかったら、体で稼げ!」。これも先生に言われた言葉です。でも、そうしていくうちに、バランスよく知恵も付いてくるものなのですね。

 「自分の人生、何をもって何をなすのか?」ということに、すべて繋がっていくのだと感じます。

(昨年、医療法人耕和会が宮崎市で開催した研修会にて)
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