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命の始まりに菌ちゃんがいる 2589号(2015/02/16)
その3 世の中にいらないものなんてない。害虫も雑草も自分の場所で自分の役割を果たしているだけだった

NPO法人大地といのちの会 理事長 吉田俊道
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 なぜおいしい野菜には虫がつかなくなるのか? 少し理論的に説明しましょう。

 有機物(生き物の死体)の分解、合成過程には発酵と腐敗の二つの道があります。そして関与している生物がそれぞれにいるわけです。

 この二つの道のどちらにも関与できる生物はあまりいません。

 私たち人間は、発酵の世界で生命を食べつないでいます。逆に、うじ虫や害虫たちは、腐敗している食べ物や腐敗しそうな食べ物を食べて、栄養を吸収しています。

 生き物は腐敗か発酵かの、どちらかの世界に分かれて生きているのです。

 畑によく現れるフトミミズは腐敗の生き物です。空気の少ない固い土や、微妙に腐敗臭のする土にたくさん発生し、腐敗しかけた有機物を食べて暮らしています。

 モグラはそんなフトミミズを食べるために、腐敗臭のする土のほうへ動き回ります。つまり、モグラの害が多いということは、土が腐敗に傾きすぎているということを意味しているのです。

 しかし、フトミミズは腐敗した土を発酵の世界に変えてくれます。

 そしてモグラも、結果的にたくさんの空気を土の中に運び、より早く土の状態を発酵に戻してくれます。

 4年前まで、土の中を荒らして野菜を枯らすモグラが私はとても憎かったです。それが今では「モグラさん、ありがとう」になりました。

 発酵している土の中はミミズもモグラも少なくなります。土が完全に発酵状態になると、住む世界が違うので自然といなくなるのです。

 私たちが農業を営む上で敵と考えてきた病害虫は、敵ではなく、ただ自分の場所で自分の役割を果たしていただけだったのです。

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 雑草も同じです。草を取るから、土はいつまで経っても団粒構造が発達せず、いよいよゴウブシやスズメノカタビラなどの引き抜きにくい草だらけになるのです。

 反対に、よその草まで持ち込んでたっぷり土に入れると、ふかふかで微生物たっぷりの発酵型土壌に変わります。

 ナズナやハコベなどの抜きやすい双子葉類の草だけ生えるようになり、野菜は後味がよくなり、病害虫も発生しなくなります。

 雑草をできるだけ小さいうちから除草しようとする農家は多いです。ですが、ためしに運動場や固い土の畑によく生えているスズメノカタビラを、思い切って大量に畑に入れてみてほしいです。数か月すると、もともとタネもなかった双子葉類の草が生えてきます。

 今、中学校では生命の循環と生物の育成を習うことになっています。

 しかし、どれだけ教室で知識を学ばせても、校舎の周りで育っている雑草を捨ててしまっています。

 そんな中、福岡教育大学では雑草を運動場のような固い土に入れて、数か月で土をふかふかに変える実験を行っています。そこで育てた野菜が元気でおいしい「菌ちゃん野菜」になるかどうかを検証しています。

 厄介者でしかなかった校庭や校舎の周りの雑草が循環して最高の土を作り、とってもおいしい野菜が生まれる。そして、その野菜を育てた人がありがたくいただく。

 そのとき、「世の中の生き物はすべて自分とつながっている。世の中にいらないものなんてなかったんだ」ということを初めて実感できるのだと思います。

(熊本市で行われた「こどもの給食を考える会くまもと」主催の講演より
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