笑顔を守るメンタルサポート 2535号(2013/12/16)
その5 小学1年のマサシとその親子から僕は大切なことをたくさん教えてもらった
株式会社ゆめさぽ~と代表 筒井正浩
小学生のマサシは「自分のことで泣かれるのが嫌や」と言いました。「だから、僕も泣かないと決めてる」と。手術、抗ガン剤、放射線治療。めっちゃ苦しいはずなのに、マサシは治療で泣いたことがありませんでした。
でも、そんなマサシが唯一泣くときがあったんです。
治療のため、マサシは入退院を繰り返していました。次の治療のための入院が決まると、マサシは弟2人に謝るんです。
母子家庭で、身寄りのないこの親子は、マサシが入院すると、お母さんも付き添いをしなければなりません。そのため、5歳と3歳の弟たちを児童養護施設に預けないといけないのです。「寂しい思いさせてごめんね」って、6歳のマサシが弟たちに泣いて謝るんです。
でも、5歳の弟は笑顔で「ううん、お兄ちゃん、注射頑張ってね」って、3歳の弟は「お母さん、お泊まりしてきたらいいからね」って答えます。
お母さんは児童養護施設に2人を送っていきます。2人を車から降ろし、今度はマサシと病院へ向かいます。その車が見えなくなると、5歳と3歳の弟は抱き合ってワンワン泣くんです。弟たちは家族の前で感情を出すことを我慢していたんです。マサシとお母さんを悲しませると知っていたから。それを施設の方に聞いたとき、僕は涙が溢れました。
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2010年の11月に自宅へお見舞いに行った時、マサシは自分でオシッコができなくて、尿管に管を通している状態でした。マサシは会うなり、「アニキ、お腹、気持ち悪い」と言いました。見たら、オシッコが溜まるはずの袋に全然溜まってない。詰まったんやとすぐに分かりました。
「みっちゃん(お母さん)、これ詰まってるで! 病院行ってきれいにしてもらおう」
すぐ僕の車で病院に連れて行きました。
病室に先生が入ってきて、「マサシくん、お腹気持ち悪かったな。すぐきれいなものに替えるね」と言いました。管を抜くときマサシはすごく痛がった。普段、痛がるところを見せないマサシが痛がりました。
先生が「マサシくんごめんな。本当は細い管を入れたいねんけど、細い管を入れたらまた詰まるから太い管入れさせてな。ちょっと痛いけど頑張ってな」と言いました。
マサシは骨と皮だけの小さな手で僕の手をギュッと握った。先生が管を入れる間、「痛い、痛いよ、アニキ、助けて!」って、普段は絶対泣かないマサシが泣くんです。どれだけ痛いやろうって思ったけど、手を握ってあげることしかできませんでした。
そしてやっと管が入ったとき、マサシは肩で息をしていました。
僕は泣きながら、マサシをギュッと抱きしめて、抗ガン剤でつるつるになった頭をなでながら、「マサシ、よう頑張ったな。よう頑張ったな」って言いました。
その時、先生がそっと部屋から出て行こうとしました。すると、僕に抱かれていたマサシが、クルッと先生の方に振り返って、「先生、ありがとう」って言ったんです。ホンマにすごい子やと思いました。
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その年の11月28日、朝4時に携帯電話が鳴りました。画面を見ると、マサシのお母さんからでした。
「アニキ、マサシの息がもう止まる。最後に何か言うてあげて!」と叫んでいました。たぶん、携帯電話をマサシの耳元に当ててくれてたんやろうね。僕は全力で「マサシ、愛しているよ! マサシ、愛しているよ!」って叫び続けました。
そして、車に飛び乗って病院に向かいました。でも、マサシの最期には間に合いませんでした。
僕はマサシと、この親子から大切なことをたくさん教えてもらいました。ほんま笑顔のかわいい子でした。
(福岡市で行われた「アニキ講演会」より~元旦号に続く)